住む人だからわかる、「川越のイイモノ」。日常に寄り添い、人を繋ぐ3ピース|LOCAL GOODA #01
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    暮らし・住まい

    住む人だからわかる、「川越のイイモノ」。日常に寄り添い、人を繋ぐ3ピース|LOCAL GOODA #01

    2026.04.06

    江戸時代、舟運で賑わった町、川越。東北や北関東から川や運河をたどって運ばれる多くの物資が集められた場所である。

    当然、文化、技術などももたらされた。それは舟運なき現代においてもさほど変わらないようだ。川越という町、そこに息づく人たちに導かれるかのように、独自の技術、スタイルを持ったものづくりの達人たちが今も川越に集い、根付いてきている。古くからの伝統を受け継ぐ工芸品や民芸品、あるいはそれに今の時代のテイストを反映させた工芸品が川越には今も多い。

    各地でつくられている「良いモノ」とそのつくり手にフォーカスし、地域を深堀りする本企画。今回は、「埼玉県川越市」を舞台に、感度の高い地元ツウ「=セレクター」が注目する手仕事を、3つご紹介したい。

    Text:Takahiro Kadono
    Photos:Etsu Moriyama

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    • 安田太陽さん(Designer/船頭)
    • 【川越】のセレクターは……

      安田太陽さん(Designer/船頭)

    • 大学でプロダクト・デザインを学び、卒業後家電ベンチャーに就職。家電からカタログまでなんでも取り扱ったことで、さまざまなデザインに対応できるようになった。現在は独立してデザインとブランディングの会社「THE SUN」を設立。地元川越の企業や店舗のHPを手掛けたり、さまざまなつくり手を集めたマルシェを主催するなど、地域振興にも尽力している。また、川越の屋形船で船頭を務めるなど、地域に溶け込む活動も積極的に行っている。

    1.川越愛で繋がるクラシカルな眼鏡フレーム――澤口眼鏡舎

    埼玉県川越市、澤口眼鏡舎の眼鏡フレーム

    「まず紹介したいのは、『澤口眼鏡舎の眼鏡フレーム』。つくり手の澤口亮さんと出会ったのは12〜3年前。長野県松本市で開かれているイベント『クラフトフェアまつもと』の会場でした。しばらくして、いつの間にか川越に工房を構えていたので驚きました。私も同じプロダクト・デザイナーなので、すぐに親近感が沸きました。

    澤口さんはすべてオーダーメイドで眼鏡フレームをつくられているんですが、今、川越でイケてる人はほとんど澤口さんの眼鏡をかけています。それくらい、モノも人も、地元からの信頼と評価を得ているんです」

    埼玉県川越市、澤口眼鏡舎の眼鏡フレーム

    2.四季のリズムの輪の中でつくられる藁プロダクト――藁竹茅

    埼玉県川越市、藁竹茅のぞうり

    「二つ目は、『藁竹茅(わらたけかや)の藁プロダクト』です。藁細工や竹細工は、じつは普段の生活に馴染む工芸品で、我が家でも鍋敷きやバッグ、果物を入れるかごなどが活躍中(以前は草履もありました)。

    それに、つくり手の高橋圭三さんのモノは買って使っておしまいではなく、身近な素材を利用して自分たちでつくれるんだぞっていうスタンスに共鳴します。無ければつくってしまおうというDIY精神は自分の理想に近いし、師匠のような人がいるということが嬉しいですね。

    高橋さんとは一緒に船頭もやっていて、先輩であり、友人であり、第二の父だと思っています。船頭をする時は、藁竹茅の肩掛けポーチが活躍しています。ケータイとちょっとしたものが入って、サイズ感も質感もとてもいいです」

    埼玉県川越市、藁竹茅の鍋敷き、ポシェット

    3.伝統だけではない現在進行形の和蝋燭――HAZE

    埼玉県川越市、HAZEの和蝋燭

    「3つ目は、『HAZE(ヘイズ)の和蝋燭』。我が家では『イト今』という商品を、ペットの仏壇で使っています。

    HAZEのつくり手である櫨(はぜ)さんは、素材とコンセプトにこだわって火を追い求めている感じがします。和蝋燭って古い工芸品ではあるのですが、HAZEの和蝋燭は、とても尖っていてパンキッシュでもある。でも、火を灯すと心が和む。飼っていたフェレットのことをあたたかく思い出すことができ、気持ちが穏やかになります。炎の揺らぎ方が独特で心地よく、煤がほとんど出ないのもいい。

    また、この蝋燭の中には、満月のタイミングで汲み上げた海水でつくる伊勢の塩が入っているんです。だからお清めとしてこの蝋燭を使うというのもいいと思います」

    埼玉県川越市、HAZEの和蝋燭「イト今」

    じつは町を良くしていこうとは思ってないんです

    安田太陽さんの守備範囲は広い。本来はデザイナーだが、ブランディングも行えば店舗立ち上げにも参画する。地域のつくり手を集めたマルシェの主催や、船頭までも。

    「船頭はですね、町に入り込みたいからはじめたんです。おかげさまで、多くの人から声をかけられるようになりました。それと、船頭は船を漕ぎながらお客さんにいろいろな話をするんです。私は喋るのは得意ではなかったのですが、操船術とともに話術も向上しました。これは本業でプレゼンする時に役に立ってます」

    川越、デザイナー・安田太陽さん

    安田さんにとって川越は地元だ。その川越に戻ろうと思ったのはどうしてなのか。

    「川越って地方と都会のちょうど間にあるんです。都内に通える距離だし、少し行くと自然も多い。田舎って感じもなく、都会って感じもない。自分のペースで暮らせる町なんです。本当にちょうどいい感じです」

    その川越でここまで濃厚に地元と関わり合う理由はなんなのか。

    「じつは町を良くしていこうとは思っていないんです。ただ灯台下暗しは嫌で、自分がこの場にいるからには役に立ちたい。川越という町ではそれができるか。それはわからないけれど、でも自分の町がダサいというのはイヤじゃないですか。だったら自分の培ってきたものを生かせたらなと」

    川越、デザイナー・安田太陽さん

    最後に安田さんにとって心地良いモノとは。

    「ストレスなく使えるモノです。でも逆に、心地の良いストレスは大好きです。基本的にはシンプルなモノが好きなのですが、逆に過剰な装飾のモノに惹かれることも多いです。結局、モノが好きなんでしょうね」

    町のかすがい役のような仕事を楽しんでこなしている安田さん。まだまだ川越は面白くなりそうだ。


    【川越のいいモノ、まだあります。】

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