「枯らした」経験も肥しになり、いつか自分にフィットする植物や生き方が見つかる──SOLSO・増田 晃
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    暮らし・住まい

    「枯らした」経験も肥しになり、いつか自分にフィットする植物や生き方が見つかる──SOLSO・増田晃

    2026.03.16

    商業施設やオフィスの植栽計画からショップ、ファームの運営まで、植物を通して人の暮らしと向き合うクリエイティブ集団、「SOLSO」。その立ち上げ期から関わり、人々の暮らしに植物を溶け込ませるトップランナーとしてさまざまな取り組みに携わってきたのが、取締役でグリーンディレクターの「増田晃」さんだ。前職で会社員として働くなかで芽生えた、環境や空間への関心。その延長線上にあったのが、植物に関わる仕事という選択だったという。

    春は、「はじまり」の季節。新しい環境に高揚感を覚える一方で、不安を抱えながら迎える新生活も少なくない。今注目を集める「あの人」を紐解く、新生活の記憶と彼らが好きなモノの話から、自分自身の「はじまり方」を見つけてみてはいかがだろう。

    Photo:Yuto Kuroyanagi/Text:Kazuyuki Nomura

    たまたま会った社長に「履歴書送りました!」の行動力

    グリーンディレクター 増田晃さん

    ——増田さんが植物に興味をもったきっかけって何だったんですか?

    僕、前職はSEだったんですよ。オフィスのあるビルのなかで、1日中パソコンの前で座りっぱなしの生活。今でこそ改善されていると思いますが、当時はオフィス環境なんて後回しにされており、パソコンが並んだだけの殺伐としたオフィスで始発から終電までひたすらパソコン画面と向き合う生活でした。それでも数年は頑張ってやっていたのですが、ちょっと不健康過ぎるなと思い徐々に転職を考えるようになったんです。

    ——それでSOLSOに?

    そうですね。僕はもともとファッションとか建築、インテリアがすごく好きで、それらを取り巻くサブカルチャーもずっと追っていたんです。それで、次やるなら好きなことを仕事にしたいなと思って色々考えていた時に、当時、SOLSOがファッションディレクターやスタイリストさん、建築家さんなどさまざまなジャンルの人と一緒に仕事をしているのを雑誌やブログで見たんです。当時SOLSOを立ち上げて間もない頃だったんですけど、それが凄く新鮮で、カッコいいなと思って。植物を通して自分が好きな業界の人たちと関わるのも面白いし、一緒に働きたいなと思ったんです。

    ——それですぐに入社できたんですか?

    当時は代表の代表含め、SOLSO立ち上げメンバー数名だけの本当に小さな会社だったのですが、住所を調べてすぐに履歴書を送ったんです。で、履歴書送った数日後、当時できたばかりだった代官山のサタデーズサーフっていうお店に立ち寄ったら、そこに代表がたまたまいたんですよ。それで「履歴書を送らせてもらったのでよろしくお願いします!」って声をかけたら、「じゃ今から面接しよう」ってことになって。そこから気付いたら入社していたみたいな感じですね(笑)。

    ——凄い行動力ですね。

    運が良かったのか、縁があったのか。でも、当初は植物に対する知識がほとんどなく、変に先入観みたいなものがなかったので、逆にそれが良かったのかなとも思います。うちは当初からお客さんの要望を聞いて、それに合わせて空間をつくっていくのが基本。多種多様なクライアントがいるなかで、植物以外の知識が生きてくる場面も多々あるんです。

    枯らすことで分かることもある。自分に合うグリーンの条件

    ——春になると植物が恋しくなりますが、なぜなんでしょう。

    環境が変わるなかで知らず知らずのうちにストレスがたまり、癒しを求めるというのはあると思います。人間は自然を好み、自然と繋がりたい本能的欲求をもつ「バイオフィリア」という考え方があるんですけど、グリーンとか自然に触れていると幸福感が得られるというのは実証されていることなので。うちのお店にも、春になると沢山のお客さんが植物を買いに来られますよ。

    ——植物を選ぶのって結構難しいですよね。自分の家にグリーンを取り入れる際、どんなことに気を付けて選ぶと良いのでしょうか。

    よく聞かれるのですが、僕が大事だと思うのが、その人のライフスタイルと、どこに置くかということですね。それによって選ぶべき植物はかなり変わってきます。例えばカッコイイから、形が好きだからという理由で凄く手のかかる植物を育てたとしても、自身のライフスタイルと合わないとすぐに枯らしてしまいます。あと、日当りや風の通りも大事ですし、置く場所で邪魔にならない樹形のものを選ぶことも大切です。

    今はネットでさまざまな情報が手に入りますが、住環境は千差万別。例えば日当たり一つとっても直射日光が当たるのか、カーテン越しに当たるのかでも変わってきますし、エアコンの使用状況によっても室内温度は変わってきます。僕がお客さんから聞かれた時は、置く予定の場所の写真があれば必ず見せてもらい、ご提案するようにしています。失敗したくない人は、置く場所の写真を撮ってショップで相談するのがベストだと思います。

    ——ちなみに、増田さんは家でどんな植物を育てているんですか?

    僕も、いろいろな植物を育てていましたが、仕事が忙しくなってあまり世話ができず、沢山枯らしてしまった経験があります。いま残っている植物は、カシワバゴムノキ、サンセベリア、ポトス、ランなど、週1回、もしくは2週に1回水やりをすればいい“強い”植物たち。今残っているこれらの植物が、僕のライフスタイルに合った、生活に寄り添ってくれる植物たちだったということですね。

    ——自己流で育てると、枯らしてしまうのが怖くて。

    僕自身、実際に育て、枯らしながら知識を蓄積し、自分に合う植物、生活に寄り添ってくれる植物を探していきました。ネットで知識を集めるのも良いですが、枯らしてしまった経験のほうが後々活きてくることが多いと思います。枯らさないと分からないことも、多々ありますし。大事にしていた植物を枯らしてしまうと悲しいですが、あまり恐れ過ぎずにやってみることも大切だと思いますよ。

    増田さんの気分をアゲる「お気に入り」

    ——お気に入りのガーデニンググッズやインテリアを教えてください。

    愛用のガーデニンググッズたちです。黒のエプロンはBRIEFING(ブリーフィング)×SOLSOで制作したワークエプロン。ハサミ類も全部入るのですが、穴が開かないようにしっかり補強されていたり、後ろにもポケットがついていたりと凄く使いやすい。サコッシュ感覚で使えるし、自宅ガーデニングの際にあると気分もあがると思います。うちのスタッフもみんな使っています。

    レザーのハサミケースはヘリテージレザーというアメリカのブランドのもので、結構長いこと使っています。レザーなので経年変化も味になりますね。

    ハサミは昔からある日本のサボテンというブランドのもので、剪定バサミはアルスというブランドのもの。ホームセンターなどでも買えます。ハサミ類は良いモノを研ぎながら長く使う人もいますが、僕は使えなくなったら買い替えるというスタンス。茎をカットしたり、皮を切ったりするフローリストナイフはビクトリノックスのもの。これは結構長く使っています。

    左は昔から好きで集めている、NUUTAJARVI(ヌータヤルヴィ)のヴィンテージフラワーベスです。フィンランド最古のガラス工場でつくられたもので、色とかカタチとか、本当に完成されていて美しいなと感じます。今でもさまざまなブランドがデザインベースにしているほど。最近はかなり高値で取引されているためなかなか買えないのですが、たまに掘り出しものを見つけた時に買っています。

    右は花や植物の標本です。たまにヴィンテージショップとかに無造作に置かれていたりするもの。何の植物なのか、年代なども不明ですがインテリアとして家に飾ると結構雰囲気があっていいので、見つけたら買っています。価格も高くなく、数千円くらい。

    植物の書籍や写真集も好きで個人でもいろいろ所有しているのですが、こちらは特に好きな写真集。20世紀を代表する写真家、アーヴィング・ペンが1967〜73年の期間、VOGUEのクリスマス号で撮られた写真をまとめたものです。SOLSOで働き始める前、六本木でイッセイ ミヤケがアーヴィング・ペン展をやっていて、そこで衝撃的に出合い、絶対欲しいなと思い数年後に手に入れたものです。本当ずっと見てられるほど美しい1冊です。

    植物と街、人の関係を紡いでいきたい

    ——最後に、今後の目標などあれば。

    僕たちは住環境やランドスケープをつくるお話を最初に頂いて、そこから「身近にグリーンのある暮らし」をトータルディレクションさせて頂くことが多いのですが、今後もご縁を大事にしながら、植物と街、人の関係を紡いでいけたらなと思います。

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