ファッション
アメリカのルーツと日本のセンスを併せもつ唯一無二なアクセサリーブランド「NORTH WORKS(ノースワークス)」の世界観
2024.09.25
東京都福生市にある在日米軍横田基地付近には、「米軍ハウス」や「アメリカンハウス」と呼ばれる、米兵や米軍関係者のために1950年代につくられた建物が点在している。
以前は教会や集会所として使われていた米軍ハウスを使い、アトリエとして展開している「NORTH WORKS(ノースワークス)」というジュエリーブランドを紹介したい。
アーリーアメリカンな雰囲気を背景に感じつつもオリジナリティーにあふれ、素材の美しさを大切に、1点ずつ丁寧につくられたこだわりのアイテムを、デザイナーの太田 寿さんに紹介してもらった。
取材/TAKANORI ITO
協力/平山洋次(HEMT PR)
巡り会った米軍ハウスをアトリエに
――NORTH WORKSをはじめた頃の話を教えてください
「2011年の初夏くらいだったと思うのですが、以前に勤めていた会社のメンバー4人でNORTH WORKSを始めました。さまざまな巡り会いがあり、この米軍ハウスにアトリエとショールームを構えました。私も以前は米軍ハウスに住んでいたことがあり、現在住んでいるスタッフもいます」
ネイティブアメリカンを根底にもち、自分たちにしかできないパフォーマンスを出す
――NORTH WORKSの基本コンセプトを教えてください。
「コンセプトの根底には“アメリカ”というものがあります。ただ、アメリカといってもいろいろな文化や、さまざまな国との交易の歴史があり、多方向から得た発想をデザインに落とし込んでいます。
現在でもブランドを代表するアメリカの銀貨を使ったコレクションや、ネイティブアメリカンのさまざまな部族の技法と作家をリスペクトしたインディアンジュエリーテイストのアイテムは、ブランド初期の頃からの中心的なテーマです。
それだけではなく、日本のブランドとして自分たちにしかできないパフォーマンスを発揮し、オリジナリティーを出せるように取り組んでいます」
世界で1番美しい銀貨“モルガンダラー”を使ったコレクション
――NORTH WORKSといえばこれ! というアイテムを教えていただけますか?
「アメリカの銀貨を使ったコレクションを紹介いたします。現代は紙幣になっていますが、1921年まで発行されていた1ドル硬貨“モルガンダラー”は世界で1番美しい銀貨と呼ばれています。このアンティークコインの素材を生かして製作したリングが、NORTH WORKSのファーストモデルです」
「それからバングルやペンダントヘッドなどのアイテムが増えていき、50セント、25セント、10セントのすべてのコインを使用して、コレクションが大きくなって行きました」
「この銀貨を使ったコレクションはブランドの1カテゴリーという位置づけでしたが、スマイルマークのペンダントヘッドなどは発売から人気が高まってきており、今ではブランドのアイコニックな存在になっています」
種類も豊富なバングルコレクション
――銀貨のコレクションに加え、人気のバングルについても教えてください。
「バングルもNORTH WORKSの重要なアイテムのひとつです。タガネという器具をシルバーに打ちつけて柄を形成するもので、アメリカではスタンプと呼ばれています」
「このタガネをアメリカで買ってきたり日本でオリジナルの柄をつくったりして、さまざまな組み合わせにより特徴的な柄を形成していきます。アメリカのタガネは雰囲気が良く、日本でつくるタガネは精度の高さを感じますね」
「初期の頃はネイティブアメリカンテイストなものが多かったのですが、つくり続けていくうちに、モダンで幾何学模様のテイストのバリエーションが増え、このコレクションも種類が豊富になりました」
ヴェネツィアのアンティークビーズと日本で藍染めされたヒシビーズのコレクション
――NORTH WORKSというブランドを語るうえで、ビーズネックレスも外すことのできないアイテムたちだと思います。
「ビーズのアイテムを2種類紹介いたします。ひとつは、イタリアのヴェネツィアでつくられていた“トレードビーズ”という、100年前に生産が終わったアンティークのビーズを使ったネックレスです」
「このガラス細工のトレードビーズは、ヴェネツィアから船でしか行けないムラーノ島でつくられた物が交易でアメリカへ持ち込まれ、物々交換でネイティブアメリカンの手元に渡り、刺繍やビーズネックレスの素材になったというルーツがあります」
「トレードビーズのデッドストックを仕入れるためにムラーノ島へ行き、工場の創業者のお孫さんと知り合い、可能な限り仕入れられたものをアイテムにしています」
「もうひとつ、ビーズでもアプローチが異なるアイテムがあります。貝殻でつくられたビーズで、今回ご紹介する形状のものはヒシビーズといいます。それを藍染することでインディゴヒシビーズになるのですが、貴重な徳島産の藍の葉を発酵させてつくる『すくも』を使用した天然藍灰汁発酵建てにて染めている物でして、おそらくほかには無い日本を意識したシリーズになっています」
海外でも人気のNORTH WORKS
――NORTH WORKSは海外でも人気ですが、その取り組みについて教えてください。
「2014年から年に2回、パリで展示会をやっています。最初の頃はあまりオーダーをもらえなかったのですが、現在は韓国、中国、アメリカをはじめとした約10か国の取り扱いがあります。私たちの“根底にあるアメリカ”は、海外から見るとすごく日本を感じるものなのかもしれません」
数あるアイテムのなかから一部を紹介してもらったが、モルガンダラーのコインやトレードビーズなど、いずれもアンティーク素材へのこだわりの強さを感じられる物ばかりだ。
歴史のある素材に独自のデザインを施して更なる価値を構築する。NORTH WORKSのアイテムには、ほかにはない奥深さと何年経っても褪せることのない魅力がある。
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ファッションライター
伊藤孝法
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ファッション、メンズビューティーのジャンルでさまざまな媒体で執筆中。中目黒の老舗セレクトショップOUTPUTオーナーでもあり、ブランドのセールスやPRを手がける。WWDファッショニスタ100人がリコメンド!に参加。故郷北海道でFM番組のパーソナリティーも担当している。