次はどこで何をしよう
頭の中は遊びでいっぱい

俳優業のかたわらモータースポーツ番組のMCを担当する中尾明慶さん。アマチュアレースへの出場経験もあり、バイク・クルマ好きとして知られている。「極めたい遊びは？」という問いにも、迷わず「バイク！」と答えた。

「とにかく乗り物が好きなので“遊び”って聞かれると、クルマやバイクになりますね。ひとりでツーリングに出かけたり、目的地を決めず走りに行きたいという願望もあるのですが、子どもが生まれてからは家族が最優先。休日は息子が行きたいと答えたところに出かけます。こないだ“お父さんってどんな人？”って息子に聞いたら、クルマとバイクの運転が上手な人って答えたんですよ」

親になって以来、自身の“遊び”からは離れがちと語るものの、“乗り物好き”の顔は息子にもしっかり伝わっている。ただ運転が上手いパパという評価には少し不満もあるようだ。

「もうちょっとほかに良いところはないの？と思うんですけどね。だって、自動運転が発達したら、良いところなくなっちゃいますよね（笑）」

そう言いつつも目尻は下がりっぱなしだ。そんな愛する家族と遊ぶことで常に頭がいっぱいだという中尾さん。

「もちろん仕事は大好きですが、遊ぶ時間も大事にしたい。俳優という仕事も、この世界が好きで飛び込んだので、どこか遊びの延長のような感覚があります。だから続けられているのかもしれませんね。それでもひとつの作品が終わったら、近場でも構わないので、どこかに出かけたい。常に遊びのことは頭にありますね」

旅先では息子や奥さんを優先
でも、食事だけは譲れない

どこかに遊びに行きたい思いを抱えたまま、仕事に励む。そして終わったら、全力で遊ぶ。

「奥さんの実家がある九州には年に2回は必ず帰ります。また、海外旅行にも年に1回は行くと決めています。そういうルールにしておかないと、なかなか長い休みも取れないし、実現できないですから」

旅行先では息子や奥さんの希望を優先するスタンスだが、唯一、譲れないものがあるという。それは食事だ。あらかじめリサーチしておいた郷土料理が食べられるお店や名店に必ず立ち寄るのが、中尾家の旅のルールになっている。

「奥さんがショッピングに行きたいと言えばいくらでも付き合いますし、息子がテーマパークで遊びたいと言えば、喜んで連れて行きます。その代わり、食事の予定だけは僕が決めるんです。僕が旅先でしか食べられない美味しいお店を探して、１時間並ぼうが絶対に食べに行きます。息子も奥さんもそこまで食へのこだわりがないので、一人だけテンションがあがっているんですけど（笑）」

とにかく美味しいものに目がなく、オススメのお店が撮影現場の周辺にあれば、足を運ぶのだという。また、お出かけや旅での荷物に対するスタンスも独特だ。

「とにかく荷物を減らしたいんですよ。海外旅行もパスポートひとつでいいくらい。家を出るときに、そろそろ捨て頃のボロボロになった服を着て、旅先に到着したら捨ててしまい、あとは全部、現地で調達することもあります」

文字通り、身軽な旅が好きなのだ。

ヤバイ！俺、大人になっている
ニットが似合う自分に新鮮な驚き

今回の撮影ではホテルを使用し、中尾さんには大人の旅のひとコマを切り取ったようなコーディネイトに挑戦してもらったが、自身のファッション観については、こう語る。

「格好つけすぎないというのがマイルールです。例えば、トップスやパンツを上品にまとめたのなら、足元はスニーカーにするなど、どこか崩したいんです。あとは、上半身は若干大きめサイズで、下半身はジャストフィットというバランスが好きですね」

つまり、シックで大人っぽい今回の衣装とは対極のカジュアルなスタイルを、プライベートでは好む。しかし、衣装に身を包んだ、見慣れない自分の姿には刺激を受けたという。

「黒のニットを着る自分を見て“大人だ”って驚きました。こういう服を着こなせる大人になっている自分に気づいていなかったので、“もっとちゃんとしなきゃ”って。普段はバイクやクルマばかりチェックしているんですけど、年齢を重ねて、趣味や嗜好が変わっていくのも、ファッションの楽しさなのかもしれないですね。思った以上に大人になっている自分が発見できて、嬉しいです」

新しいことに挑戦し、またひとつ経験を重ねる。変化を受け入れることで、それが血となり、肉となり、人間性へと昇華していく。それは芝居でも同じだと中尾さんは語る。

「芝居では役を演じますが、その役者が経験してきたことが透けて見えます。しかも多くを経験したほうが説得力も増すのですが、僕は早くに結婚し、子どもができたので、それが強みになっています。ファッションも同じことかもしれないですね。どんなに格好つけても、中身がなかったら表面だけ繕っているってバレてしまう。最近アンティークの時計に興味が出てきたのですが、もう31歳だし、そろそろ似合うかも」

3時間の稽古と3時間の食事会
怒涛の毎日に戦々恐々！？

年明けすぐに明石家さんまとの舞台を控えている中尾さん。楽しみな仕事だけど、ドキドキすることもある、そんな複雑な心境だという。

「さんまさんとの現場はただただ楽しいです。舞台は3時間あって、お客さんにもきっと腹を抱えて笑いっぱなしだと思います。でも、共演する僕らは足を引っ張らないようにしなくてはという緊張感と怖さがあります。さんまさんが役者陣に笑いを求めているかというとそうじゃない。僕らはあくまで一生懸命、芝居をするだけ。それを“笑いの神様”が調理してくれるので、いかに良い食材になれるかが勝負なんです」

また、さんまさんとの舞台は稽古も独特なのだと語る。

「普通の舞台稽古ではシーンに区切って、そこを何度も繰り返しながら演出や演技を固めていきます。でも、さんまさんは、初めから最後までを通しで行う稽古を好みます。毎日、3時間ある舞台を通しで稽古し、そのあとはみんなで必ず食事をする。それが毎日続くんです。もちろん食事の時はみんな笑いっぱなしです。すごく恵まれている環境ですよね」

そんな怒涛の日々に思いを馳せる中尾さん。

「この作品はコントではなく、あくまで舞台劇。散々笑ったあと、泣ける場面もあります。日頃から舞台を見ている人には新鮮に感じるお笑いの要素があり、はじめて劇場に行くような人には小難しい設定もなく、とても見やすい内容になっています。笑いと演劇の良いところ取りで、誰でも楽しめるはずです」

貴重な舞台はチケットの争奪戦になりそうだ。