25周年をむかえたゴスペラーズが表現してきた遊び心

Interview
村上てつや
黒沢 薫
(ゴスペラーズ)
Photos:TATSUYA YAMANAKA(stanford)
Text:HIROMI YAMANISHI(HISTOREAL)
2019.12.16
大人の好きなモノ語り
1994年12月21日にシングル「Promise」でメジャーデビュー。2019年12月21日に25周年を迎える、5人組ヴォーカルグループ、ゴスペラーズ。メンバー全員がリードヴォーカルを取るのみならず、作詞、作曲をこなし、ほかのアーティストへの楽曲提供、プロデュース、コーラス参加、ソロ活動など、マルチに活躍。それぞれのメンバーがもつ“遊び心”を、さまざまな形で表現してきた彼ら。1989年のグループ結成時からのメンバーである、村上てつやさんと黒沢 薫さんに、ファッションへのこだわり、初のシングルコレクション「G25 -Beautiful Harmony-」について聞いた。
ゴスペラーズの黒沢薫さん

スーツが似合う年齢
ラブソングのヒット曲が生まれたのは、
“心身ともに整った”ということ

テレビやステージ上で見るゴスペラーズといえば、スーツのイメージ。最新シングル「VOXers」の衣装もグレーのスーツだ。

「グレーで統一はしていますが、よく見ると、全員違いますよ。まさに“遊び心”ですよね(笑)。『永遠(とわ)に』あたりから、ジャケットにノータイ、という衣装のアイコンはそろってきましたね」(黒沢)

「2000年リリースの『永遠(とわ)に』で、僕たちは30歳くらいなんですよ。30って今思えばとんでもなく子供ですが、ちょうどスーツが着れるようになる年齢。そういう頃にラブソングのヒットが出たというのは、“心身ともに整った”ということかもしれないですね」(村上)

それでは、プライベートでおふたりはどんな洋服を着ているのか?

ゴスペラーズの村上てつやさん

「20年くらい前に、イタリアのハイブランドを買っていたんです。当時の自分からしてみれば、すごく年上の人が着るような洋服を買っていたのですが、今ちょうどそれらの服がしっくりくるようになりましたね。背伸びしてカッコつけていたのも無駄ではなかった、と今になって思います(笑)」(黒沢)

「僕はイギリスのマイナーブランドの洋服をインターネットで買ったりしています。大きめを買って洋服の直し屋さんに出して、自分の好みにリサイズして……。最近ではスポーツアイテムの1㎝くらいの丈感にもこだわり始めていて。よく行く直し屋さんが2店あるんですけど、内心僕のことを嫌がっていると思いますよ(笑)。商品自体はそんなに高価なものじゃないのに直すのにお金がかかるので、コスパがとても悪い(笑)。でも、“洋服直しはこんなにおもしろいのか!”と、ここ10年くらいで気づきましたね」(村上)

同級生だった村上さんと黒沢さんが、初めてアカペラを歌ったのは高校3年生のとき。その後、村上さんが進学した早稲田大学のアカペラサークルに黒沢さんが合流し、ゴスペラーズを結成。当時、たくさんの大学のアカペラ好きが、このサークルに集まっていた。

「楽器が達者じゃなくても、人前でカラオケではない音楽ができる、というのが嬉しかったですね。アカペラは構成もアレンジも自由で、決まった形がない。楽しいし、ハモれるし、目立てる(笑)。遊びの延長みたいな感じ」(黒沢)

「アカペラって、同じように聴こえながらどれもちょっと違う。お店によってさまざまな味があるカレーみたいなものですね(笑)。楽しくて、美しくて、熱い。それを伝えるために、アカペラを中心としながらもアカペラだけにこだわらない音楽を25年間大事にしてきたからこそ、比較的広い世界で勝負できてきたと思うんです」(村上)

ゴスペラーズの黒沢薫さん、村上てつやさん

“楽しいを最大化したい”が
ゴスペラーズの永遠のテーマ

シングルコレクション「G25 -Beautiful Harmony- 」は、これまで世の中に送り出してきた、シングル52枚、両A面を合わせて、全58曲のシングル曲を全曲リマスタリングし、5枚のディスクに網羅。初回生産限定盤の各ディスクには、ボーナストラックとして、25歳以下のアーティストによるリミックス音源が1曲ずつ収録されている。

「僕たちはデビューの頃から“スタイルのないヴォーカルグループ”をキャッチフレーズにしていて、自分たちで作詞・作曲をすることを中心にしているものの、いろんな方々とコラボレーションをしてきたんです。今回のボーナストラックのリミックスでは“僕らの曲を素材として扱ったときに、こういうアプローチをするんだ”という驚きがありましたね。yonkeyさんの『Promise』なんておもしろかったですね」(村上)

ゴスペラーズの村上てつやさん

「僕たちが全員、作詞・作曲をするようになったのは、デビュー当時、ヴォーカルグループ用の曲をつくってくれる人があまりいなかったから。しかも僕たちは曲ごとにリードヴォーカルも、パートも変わっていく体制のグループ。自分たち用のものを自分たちでつくっていくしか、自分たちを生かす術がなかった(笑)。全員が曲をつくるので、いいアイディアが出せないメンバーがいたときでも、お互いが補い合える。そしてメンバーがつくった曲だけにこだわっているわけではないので、おもしろいものがあればどんどん取り入れたい。“楽しいを最大化したい”はアマチュアの頃から思っていたことなので」(黒沢)

ゴスペラーズの黒沢薫さん

メジャーデビュー25周年記念日の12月21日から、全都道府県ツアー「ゴスペラーズ坂ツアー2019~2020 “G25”」がスタート。2020年、25周年イヤーの新たな幕開けになる。

「“周年”になると、47都道府県をコンサートツアーで回れるのは嬉しいですね。その土地の食べ物やおもしろい場所、そういうものに『行こう! 行こう!』とノッてくるメンバーだからこそ、25年続いているというのもあります。メンバー全員、“遊び心”があるんですが、全員ベクトルが違う。酒井はゲーム、安岡はワイン、北山はもう存在自体が“遊び心”(笑)。共通しているところもありつつ、みんな違うから、上手くやれているんだと思います」(黒沢)

「ツアータイトルにはいつも“坂”をつけているんですが、最初は、上り坂をイメージしていたんです。でも、長く続けていれば下り坂もある。そして降りるときは、上手に降りなくてはいけない。そう気づいて、今は“いつも平らでないこと”というとらえ方をしています。坂道を歩き続けているうちに、30周年、35周年がきたらいいなと思いますね。もっといい曲を歌いたいし、まだ行ったことのない場所にコンサートを届けたいし、おいしいものを食べたい(笑)。その思いは、あと数年で尽きるものではないですね」(村上)

Profile
ゴスペラーズの黒沢薫さん、村上てつやさん

<右>黒沢 薫(くろさわ かおる)
1971年4月3日生まれ。東京都出身
2005年にソロアルバムの発表。大のカレーマニア。

<左>村上てつや(むらかみ てつや)
1971年4月24日生まれ。大阪府出身。
ゴスペラーズのリーダー。サッカーなど、スポーツ好きとして知られる。

メンバーは、北山陽一、黒沢 薫、酒井雄二、村上てつや、安岡 優。1994年12月21日、キューンミュージックよりシングル『Promise』でメジャーデビュー。『永遠(とわ)に』『ひとり』『星屑の街』『ミモザ』など多数のヒット曲を送り出す。

Information
5枚組シングルコレクションボックス

5枚組シングルコレクションボックス

『永遠(とわ)に』『ひとり』はもちろん、2001年から6年連続で出場のNHK紅白歌合戦で歌唱した『星屑の街』『新大阪』『ミモザ』など全58曲のシングル曲を全曲リマスタリングして、5枚のディスクに全て網羅。yonkey、空音、maeshima soshi、Mon、長谷川白紙の5組のアーティストによるリミックス音源を、各ディスクに1曲ずつ収録。

G25 -Beautiful Harmony-

G25 -Beautiful Harmony-

12月18日発売
8000円+税(初回生産限定盤 5CD+Blu-ray)
6000円+税(通常盤 5CD)
ソニー・ミュージックレーベルズ

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