スーツが似合う年齢
ラブソングのヒット曲が生まれたのは、
“心身ともに整った”ということ
テレビやステージ上で見るゴスペラーズといえば、スーツのイメージ。最新シングル「VOXers」の衣装もグレーのスーツだ。
「グレーで統一はしていますが、よく見ると、全員違いますよ。まさに“遊び心”ですよね(笑)。『永遠(とわ)に』あたりから、ジャケットにノータイ、という衣装のアイコンはそろってきましたね」(黒沢)
「2000年リリースの『永遠(とわ)に』で、僕たちは30歳くらいなんですよ。30って今思えばとんでもなく子供ですが、ちょうどスーツが着れるようになる年齢。そういう頃にラブソングのヒットが出たというのは、“心身ともに整った”ということかもしれないですね」(村上)
それでは、プライベートでおふたりはどんな洋服を着ているのか?
「20年くらい前に、イタリアのハイブランドを買っていたんです。当時の自分からしてみれば、すごく年上の人が着るような洋服を買っていたのですが、今ちょうどそれらの服がしっくりくるようになりましたね。背伸びしてカッコつけていたのも無駄ではなかった、と今になって思います(笑)」(黒沢)
「僕はイギリスのマイナーブランドの洋服をインターネットで買ったりしています。大きめを買って洋服の直し屋さんに出して、自分の好みにリサイズして……。最近ではスポーツアイテムの1㎝くらいの丈感にもこだわり始めていて。よく行く直し屋さんが2店あるんですけど、内心僕のことを嫌がっていると思いますよ(笑)。商品自体はそんなに高価なものじゃないのに直すのにお金がかかるので、コスパがとても悪い(笑)。でも、“洋服直しはこんなにおもしろいのか!”と、ここ10年くらいで気づきましたね」(村上)
同級生だった村上さんと黒沢さんが、初めてアカペラを歌ったのは高校3年生のとき。その後、村上さんが進学した早稲田大学のアカペラサークルに黒沢さんが合流し、ゴスペラーズを結成。当時、たくさんの大学のアカペラ好きが、このサークルに集まっていた。
「楽器が達者じゃなくても、人前でカラオケではない音楽ができる、というのが嬉しかったですね。アカペラは構成もアレンジも自由で、決まった形がない。楽しいし、ハモれるし、目立てる(笑)。遊びの延長みたいな感じ」(黒沢)
「アカペラって、同じように聴こえながらどれもちょっと違う。お店によってさまざまな味があるカレーみたいなものですね(笑)。楽しくて、美しくて、熱い。それを伝えるために、アカペラを中心としながらもアカペラだけにこだわらない音楽を25年間大事にしてきたからこそ、比較的広い世界で勝負できてきたと思うんです」(村上)
“楽しいを最大化したい”が
ゴスペラーズの永遠のテーマ
シングルコレクション「G25 -Beautiful Harmony- 」は、これまで世の中に送り出してきた、シングル52枚、両A面を合わせて、全58曲のシングル曲を全曲リマスタリングし、5枚のディスクに網羅。初回生産限定盤の各ディスクには、ボーナストラックとして、25歳以下のアーティストによるリミックス音源が1曲ずつ収録されている。
「僕たちはデビューの頃から“スタイルのないヴォーカルグループ”をキャッチフレーズにしていて、自分たちで作詞・作曲をすることを中心にしているものの、いろんな方々とコラボレーションをしてきたんです。今回のボーナストラックのリミックスでは“僕らの曲を素材として扱ったときに、こういうアプローチをするんだ”という驚きがありましたね。yonkeyさんの『Promise』なんておもしろかったですね」(村上)
「僕たちが全員、作詞・作曲をするようになったのは、デビュー当時、ヴォーカルグループ用の曲をつくってくれる人があまりいなかったから。しかも僕たちは曲ごとにリードヴォーカルも、パートも変わっていく体制のグループ。自分たち用のものを自分たちでつくっていくしか、自分たちを生かす術がなかった(笑)。全員が曲をつくるので、いいアイディアが出せないメンバーがいたときでも、お互いが補い合える。そしてメンバーがつくった曲だけにこだわっているわけではないので、おもしろいものがあればどんどん取り入れたい。“楽しいを最大化したい”はアマチュアの頃から思っていたことなので」(黒沢)
メジャーデビュー25周年記念日の12月21日から、全都道府県ツアー「ゴスペラーズ坂ツアー2019~2020 “G25”」がスタート。2020年、25周年イヤーの新たな幕開けになる。
「“周年”になると、47都道府県をコンサートツアーで回れるのは嬉しいですね。その土地の食べ物やおもしろい場所、そういうものに『行こう! 行こう!』とノッてくるメンバーだからこそ、25年続いているというのもあります。メンバー全員、“遊び心”があるんですが、全員ベクトルが違う。酒井はゲーム、安岡はワイン、北山はもう存在自体が“遊び心”(笑)。共通しているところもありつつ、みんな違うから、上手くやれているんだと思います」(黒沢)
「ツアータイトルにはいつも“坂”をつけているんですが、最初は、上り坂をイメージしていたんです。でも、長く続けていれば下り坂もある。そして降りるときは、上手に降りなくてはいけない。そう気づいて、今は“いつも平らでないこと”というとらえ方をしています。坂道を歩き続けているうちに、30周年、35周年がきたらいいなと思いますね。もっといい曲を歌いたいし、まだ行ったことのない場所にコンサートを届けたいし、おいしいものを食べたい(笑)。その思いは、あと数年で尽きるものではないですね」(村上)