自分の意思で
“カッコいい”と思うものを着る
難易度の高い、妖艶な衣装を着こなすイメージがある清春さん。プライベートはラフな古着スタイルが主流なのだそう。
「休日にソファーで寝てたら、持っていた携帯電話がないんですよ。『あれ? ない』と思ってソファーの下を探して、携帯電話より先に出てきたのが今日のジーンズ。久々の再会で(笑)。前はそんなに気に入っていなかったんだけど、はいてみたらめちゃいい。ここ3日くらいずっとはいてるんです(笑)。
基本的に今はいているジーンズよりもっと薄い、白に近い水色のジーンズが好きです。僕は赤が好きなので、赤に合うこういうジーンズが多くなってるのかも」
自宅や事務所にあふれている靴のほとんども、ユーズドだと言う。
「以前、黒夢のライブでベージュのエンジニアブーツをはいていたんです。最近、またはきたくなってユーズドのブーツ専門店で買ったのが、このエンジニアブーツ。エンジニアブーツは10年くらいはいて汚れや崩れをつけて“味”を出すのがいいんだけど、毎日はくわけではないから、最初から味が出ているほうがいい。
足の入り口の小さい靴とか、編み上げの靴は、脱ぎはきも大変だから、もうそんなにはかない。年とってきて、服も靴もバリアフリーがいいです(笑)」
そんな清春さんが長年研究しているのが、パンツと靴の相性なのだとか。
「メンズのコーディネートは靴とパンツの関係が一番大事なんじゃないかと。気になると出かける前に何回も靴をはき替えたり、パンツを変えて(笑)。なかなか完璧にはいかない。この研究は僕の中でずっと続いてます(笑)」
ユーズドのシンプルな上下と、エンジニアブーツ。そのコーディネートに個性的な小物が溶け込んでいる。
「右手のブレスレットは、セリーヌ。ネックレスは大阪のアンティークアクセサリーショップ「SEVEN SENCE」で買ったもの。基本的にはクロスのネックレスはしない派なんですが、これはパッと見は軽めだけど、よく見ると丁寧につくられてる感じが気に入ってます。
サングラスは、ロスに行ったときに買ったカレラ。サングラスだけはハイブランドが好きです。グッチとかトム・フォードとか。その中でも普通の人がつけるのが難しいような、はみ出しちゃってるのが欲しくなります。
今って、女の子が強いじゃない? それは悪いことではないと思うんだけど、メンズのファッションも“多数派”の女の子が見て、いいか悪いか判断されてる。でもそういうことは関係なく、自分で良いと思えるものを身に着けているほうがカッコいいと思うんです。はみだしたままでもいい」
やれる状況があるのなら、
好きなことをやっていきたい
3月18日にリリースされる、約2年ぶり、10枚目となるオリジナルアルバム「JAPANESE MENU / DISTORTION 10」は、今の音楽シーンを意識してつくったアルバムではないそう。
「昔、たくさんの人の前で演奏するとか、チャートで1位になった経験があるから思うのかもしれないですけど、そういう状態になると、ミュージシャンは心が1回グラつくと思うんです。
『この状態をキープしなきゃ』と必死になる人もいるだろうし、『今の状態を1回辞めてみよう』と思う人もいる。僕は自分から“降りて“しまったパターン。“カッコいいことしかしたくない”っていう、旧ロックタイプ(笑)。
これまで解散したり、ソロになったり、レコード会社を沢山変わったり。でもやれる状況があるんだったら、せっかくだから好きなことだけをしたい。いつでも“最後でもいい”という気持ちでやってますね。
若い人たちになんて媚びたくないし、旬なものに共通項を見出した音楽もつくりたくない。ここまできて、じたばたしたくはないんですよね」
「JAPANESE MENU / DISTORTION 10」は、“完全邦楽趣向”のロックアルバムだという。
「僕はもともと、ザ・ストリート・スライダーズやザ・モッズのような日本のロックバンドが好きなんです。僕も人並みに、海外で活動したいと思ったこともあるんだけど(笑)。
でも年を取ってきて、自分の代わりがいない中で、あと何年プレイできるかわかならないと思ったとき、『英語で洋楽っぽいにおいのする音楽をやることに、本当に意味があるのか?』と思うようになってきたんです。
日本の音楽シーンは、やるほうも見るほうも世界から20年は遅れてる。その遅れを僕が引退するまでに取り戻すのは無理。だからもう、“シーン”も関係ない、自分のやりたいことをやって終わりたい。だから自分が好きだった匂いの“超邦楽”的なロックをやりたいんです」
アルバムタイトルに含まれる「DISTORTION」とは、滋賀県の福祉作業所「やまなみ工房」がプロデュースするプロジェクトのこと。ここでは知的障がい者や精神疾患を抱えた通所者のアート活動をサポートしているが、清春さんが通所者の作品に強い刺激を受けたことから、コラボレーションが実現したのだそう。
「僕は以前からこのチームがプロデュースする衣装を着ていたんですが、その衣装にプリントされた絵を「やまなみ工房」の方が描いていることを、最近まで知らなかったんです。実際に「やまなみ工房」に行ったんですが、作品もすごいけど、制作している姿も壮絶。だけど、触れ合ってみるとすごくチャーミングな人ばかり。
ただ、僕は入所者の方々が、ハンデを抱えているけどすごく頑張っている、という部分ではなくて、こんな素晴らしい作品があるということを世の中にも伝えたい。「DISTORTION」とのコラボレーションは、今後も続けていきます」