機能美と意匠を併せもち、モノ好きが唸る奥深い世界。それが料理道具。今回、取り上げるのは「ワイングラス」です。新年会やホームパーティー、送別会など、これからの季節は自宅でワインを嗜む機会も多いと思いますが、ワインの複雑で芳醇な香りはグラスの形ひとつで大きく変化してしまいます。ワイン本来が持つ味わいを堪能するなら、まずはグラス選びから。そこで日本で唯一、料理道具コンサルタントの肩書きをもつ、荒井康成氏がオススメの逸品を紹介します。
Styling&movie&photo:YASUNARI ARAI/Edit&Text:SHINSUKE UMENAKA(verb)
2020.1.15
ワインに詳しくない人でも、一緒に食する料理が、肉メインだったら赤ワインを、白身の魚など魚介類が中心だったら白ワインを選ぶ、といった程度の知識はもっていると思います。ワイン選びの基本として有名ですが、ワイングラスも変えるべきというウンチクはあまり知られていないかもしれません。
ワイングラスは、赤ワインか白ワインかに加えて、渋みや酸味といったワインのテイストに応じて、ボウルと呼ばれるグラスの本体部分の太さや、唇が触れる口の部分の形状を変えると良いとされています。
なぜならワインは原材料である、ぶどうの品種がもつ複雑で芳醇な香りを楽しむお酒です。そして、この香りはコルクを抜いてからの時間の経過はもちろんですが、空気に触れる面積、香りが滞留するグラスの空間面積などによっても変化します。そのためワインをより美味しく味わうためには、グラスの形状にもこだわって選ぶべきだというわけです。とはいえ、ワインには無数の種類があり、ひと銘柄ごとにグラスを変えていてはキリがありません。まずは基本となる5種類のグラスを購入して、ワインがもつポテンシャルを最大限に楽しむ飲み方にチャレンジしてみましょう。
渋みが強く濃厚なフルボディの赤ワインは、グリルした牛肉料理やビーフシチューとの相性が抜群ですが、こうした赤ワインを飲むときには、一般的なワイングラスよりも少し大きめにつくられているタイプが最適です。
ボルドー型と呼ばれるワイングラスで、ボウル部分の、すぼまりがゆるやかで、チューリップの花の形にも似た縦長な形状が特徴です。フランスのボルドー地方原産のカベルネ・ソーヴィニヨンやメルロといった赤ワインの複雑で芳醇な香りが、グラスの形状によって解きほぐされていきます。また、このグラスで飲むと、口に含んだワインが舌の上で横に広がっていき、厚みのあるボディを感じつつ、強い渋みをやわらげてくれます。
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リーデル・ヴェリタス
「シングルパック カベルネ/メルロ」1986年に発売された「ヴェノムシリーズ」の軽量化と耐久性を高めたワイングラス。最高級ハンドメイドシリーズ「ソムリエシリーズ」の機能性をそのままに、口に含んだ時に感じる“重厚感”“コク”“ふくよか”な印象のフルボディは、渋みの強い赤ワインに最適。ゆるやかで窄まったグラスの形状によって、ワインの香りをゆっくりと解きほぐしつつ、舌上で厚みのあるボディを感じることができる。
参考価格2,970円
ブルゴーニュ地方の赤ワインは、ピノ・ノワールというぶどうの品種でつくられていますが、色合いがフルボディのカベルネ・ソーヴィニヨンよりも薄めで、渋み成分のタンニンも少ないのが特徴です。渋みが弱い分、繊細な酸味と果実味が味わえます。
そんなミディアムボディの赤ワインを飲むなら、ブルゴーニュタイプと呼ばれる、丸みのあるボウル部分と、すぼまった飲み口をもつワイングラスを用意しましょう。香りがグラスの中に閉じ込められ、芳醇な香りを逃しません。鶏肉や豚肉を使った淡白な味付けの料理と合わせると、よりワインのテイストを楽しむことができます。
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リーデル・ヴェリタス
「シングルパック オールドワールド・ピノ・ノワール」同じく「ヴェノムシリーズ」のアップデート商品である「ヴェリタスシリーズ」。マシンメイドによってリーズナブルな価格を実現した。大きなボウル口によって、ワインの芳醇な香りを存分に楽しむことができる。酸味が強く渋みが中程度(ミディアムボディ)で、複雑な香りの赤ワインとの相性が◎。
参考価格4,950円
辛口タイプのリースリングや、爽やかな酸味が特徴のソーヴィニヨン・ブランなど、一般的な白ワインを飲むなら、万能型と呼ばれるオーソドックスなワイングラスを用意しましょう。縦長でしっかりとした、すぼまりをもつスタンダードなボウルの形状では、ワインを飲むためにグラスを傾けると、ワインが舌先から導かれるように、舌の中央に向かって直線的に流れていきます。そのため果実味と酸味が口の中でバランスよく整うと考えられています。
こうした白ワイングラスはスパークリングワインや日本酒の吟醸酒に使っても、お酒の味わいを引き出してくれるため、汎用性があり、万能型と呼ばれているわけです。また、白ワインは一般的に約6℃〜12℃が飲み頃とされています。そのためグラスは、温度が大きく変化しないうちに飲みきれる小ぶりのサイズが良いとされています。
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リーデル・ヴェリタス
「シングルパック リースリング/ジンファンデル」もっともスタンダードな形状のワイングラスで、国際的なワインの試飲会でも使用されています。ワイングラス選びはワインの個性にあったグラスを選ぶことが一般的です。このグラスは軽めの赤ワインから、さっぱりとした白ワインまでの幅広い用途で利用できるので、どうしても最初の1つを選びきれないという方にオススメです。縦長でしっかりとした窄まりの形状によって、ワインの味、香を直線的に堪能できます。
参考価格4,950円
白ワインに適したグラスはオーソドックスな万能型ですが、唯一の例外があります。フランスのブルゴーニュ地方原産の「シャルドネ」など、こってりとした濃厚な果実味と柔らかい酸味をもつ白ワイン飲むときです。
ボディのボウル部分が大きく丸みを帯びた形状のグラスを選ぶことで、より香りを引き出すことができます。また、唇が触れる口の部分が広くなるため、流れ込んだワインが舌上でワイドに広がり、シャルドネのもつ酸味と濃厚な果実味を余すことなく、堪能することができるわけです。こうした形状のワイングラスはモンラッシェ型と呼ばれることもあります。
こうした濃厚な白ワインには帆立のソテーや海老グラタンなど、魚介類をバターやクリームで濃厚に仕上げた料理が合うでしょう。
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リーデル・ヴェリタス
「シングルパック オークド・シャルドネ」ハンドメイドにも怠らない、薄く、滑らかな口当たりを実現した「ヴェリタスシリーズ」。細く繊細なつくりにも関わらず耐久性に優れているため、食器用洗浄機での洗浄が可能。こってりまろやかな樽熟成を経た白ワインに最適です。ワインが口の中で大きく広がるため、柔らかな酸味と豊かな果実味をバランス良く味わえます。
参考価格4,950円
乾杯や食前酒として、シャンパーニュやスパークリングワインなど、発泡性のワインを嗜む人もいるでしょう。そんなワインは、フルート型と呼ばれるシャンパーニュグラスを使うのが、一般的です。幅が細く、高さのあるグラスのほうが、繊細な泡立ちを長く楽しむことができるためです。
ただ、シャンパーニュのような熟成した複雑な香りを楽しみたい人が増えたことで、白ワイングラスに似た膨らみのあるタイプがポピュラーになってきています。フルート型グラスでは感じにくい豊かな香りはもちろん、品ある酸味やミネラル感、果実味など、シャンパーニュがもつ本来の魅力を楽しむことができるでしょう。
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リーデル・ヴェリタス
「シングルパック シャンパーニュ・ワイン・グラス」シャンパーニュを白ワインで味わうという近年のトレンドを反映し、従来の細い「フルート型」ではなく「卵型」のボウル形状を採用。卵型によって、ワインと空気の接触面積や香りをとどめる空間の容積が大きくなり、複雑で豊かなアロマ、きめ細かい泡、気品のある酸味、ミネラル感、果実味をより一層楽しむことができます。まさに5感で楽しむことができる、新しいスタイルのシャンパーニュグラスです。
参考価格4,950円
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リーデル・オー
「コカ・コーラ+リーデルグラス」今までリーデル社がワイングラスで培ってきた開発プロセスにより、コカ・コーラの匂いや味、舌触りを存分に堪能できる究極のグラスです。このボウル形状によって、複雑なアロマの中から爽やかなフルーツの香りを強調。口に入れた瞬間に、滑らかな下触りで炭酸が舌を転がり、泡が味を邪魔することなく、コカ・コーラ特有の爽快感を味わえます。グラス表面は非常に薄くつくられているため、時間が経っても中の液体の温度が奪われず、冷たさが維持されるのも画期的です。
参考価格3,850円
荒井 康成 YASUNARI ARAI
料理道具コンサルタント/Kitchenware Stylist
洋菓子店店長、和陶器店主を経て、フランス陶器エミール・アンリ社の日本法人設立に携わる。以後、日本初の「料理道具コンサルタント」として独立し、「料理通信」「ELLE gourmet」など、各食情報誌でのコラム執筆やスタイリング撮影、Panasonic「ふだんプレミアム」や魔法びんのパイオニア「サーモス」のInstagramディレクション、「キユーピーサラダクラブ」や「カルビーフルグラ」など食品会社の販促物スタイリング撮影、食の学校「レコール・バンタン」では講師として、多岐に渡り活動中。著書に「ずっと使いたい世界の料理道具」(産業編集センター刊行)。http://www.araitools.com