「BRING™」の持続可能な服づくりから見えた未来のアパレルのかたち
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    ファッション

    「BRING™」の持続可能な服づくりから見えた未来のアパレルのかたち

    2023.06.08

    セレクトショップやショッピングモールなどで、ハチマークが描かれた服の回収箱を見たことがあるのではないだろうか、あの回収箱は(株)JEPLANが手がける、アウトドアアパレルブランドと古着の回収・リサイクルプラットフォーム機能をもつ「BRING™」(ブリング)が展開する古着の回収ボックスだ。BRING™では回収した服をリユースやリサイクルをしており、中でもポリエステル100%繊維の服は独自のリサイクル技術により服の原料に再生し、その再生原料を使った服づくりまで展開している。これにより「服から服をつくる®」資源の循環を実現している。今回はそのBRING™の事業について、BRING™のブランドディレクターである中村崇之(なかむらたかゆき)さんに伺った。

    取材/TAKANORI ITO
    協力/小林悠里(株式会社JEPLAN)、藤田貴久(DOVE WORKS.)

    写真向かって右:中村さん、左:BRING EBISU店長の宮武雅子さん

    回収箱のハチマークに込められた意味

    ――BRING™のお話を伺う前、に御社のスタート時のことを教えてください。

    「2009年に、中小企業基盤整備機構の調査事業として、不要になった服の回収を小売店の店頭でいろんなブランドと協力してやりましょうとなったのが、スタートになります。最初は(株)良品計画さんとか(株)ワールドさん、(株)丸井さんなど、数社と一緒に始めました。ハチマークの服の回収箱は2011年頃からいろいろな場所で設置がスタートし、現在は197ブランドにご協力いただき、回収拠点は4299(2023年4月時点/スポット開催も含む)箇所にも及んでいます。この回収箱に描かれているハチのマークは2009年からグラフィックデザイナーの新村則人さんにアートディレクションをしてもらっているのですが、ミツバチって花を回って蜜を集めてますよね。それと同じように、皆で服を集めよう、いう意味が込められています」

    BRING™のハチマーク

    BRING™のリサイクルプロセスなら、どんな色にも生まれ変われる

    ――回収された服が、実際に再生原料になるまでを教えていただけますか。

    「まず、回収したポリエステル100%の服は『解重合 → 脱色・精製 → 重合 → 再生PET → 糸 → 生地』という流れでリサイクルされていきます。服のリサイクル方法も色々ありまして、例えば剣山のようなもので生地を裂いていき、繊維にしていくというやり方もあるのですが、それだと繊維の長さが短くなってしまいます。短い繊維はチクチクするし、太い糸しかつくれないという側面があります。高品質なものをつくろうと思うと一般的なリサイクル方法では限界がある。私たちはポリエステルを分子レベルまで分解して不純物を除去するので、石油からつくるのと同じ品質まで再生して、繰り返し何度で もリサイクルすることができるんです。さらに従来のリサイクル方法だと色を抜くことができないので、白い服をもう一度つくろうと思うと白い服を集めなくていけなくて、青い服をもう一度つくろうと思うと青い服を集めなくていけないのですが、私たちのリサイクル方法では脱色が可能なので、再び製品にする時に糸や生地の段階で染めて、何色にすることもできるのです」

    ブランドスタートまでの10年間の取り組み

    ――ここからは、BRING™誕生のお話を伺っていきたのですが、繊維のリサイクル事業からブランドになっていったのはいつぐらいで、どういった経緯だったのでしょうか。

    「実はBRING™としてブランドになるまでには事業開始から10年弱かかっており、ブランドスタートは2017年です。それまでは「FUKU-FUKUプロジェクト」という名称で古着の回収を行い、別の技術でリサイクルを行っていました。当時、愛媛県今治市に綿製品からバイオエタノールを作る工場を持っており、製造したバイオエタノールは、今治という土地柄、タオルの染色の際の燃料などに使われていたんです。その後、綿製品の服とポリエステル製品の服の供給量がここ20〜30年で逆転したという背景もあり、ポリエステルのリサイクルなしには服のリサイクルをやっているとは言えない状況になってきていたので、私たちも新たに北九州に工場を構え、ポリエステルのリサイクルを始めたという経緯です。そこでつくった再生ポリエステル樹脂を色々なブランドに販売していましたが、後々、自分たちでも服をつくっていこうということになりました。最初は ネット通販から始まり、2021年11月に恵比寿に直営店をオープンさせたという流れになります」

    “4日穿ける”WUNDERWEARシリーズのアンダーウェア

    ――実際にBRING™の製品について教えていただきたいのですが、現在のBRING™のカテゴリーや、ラインナップを紹介してもらえますか。

    「まずWUNDERWEAR(ワンダーウェア)というカテゴリーのアイテムからご紹介させていただきます。再生ポリエステルとメリノウールをブレンドしたアウトドア向けのラインです。すごく伸びる生地なのですがSとMの2サイズあり、Sが女性用、Mが男性用と認識してもらえると良いかと思います。このアイテムの特徴として“4日穿けるパンツ”と言っているのですが、メリノウールは防臭性が強くその特性を活かしたアイテムになっています。アウトドアシーンでは、荷物を減らす目的でこのアイテムを使うという方もいらっしゃいます。同じ目的だと、出張などにもおすすめです。前後と裏表がなくロゴも前後に付いているデザインになっており、1日目は普通に穿いて、2日目は前後を反転させて履いて、3日、4日目は裏返してまた前後で履いて4日間ということです。ポリエステルという素材は機能を高めやすい素材なんです。たとえばUVカットの機能を入れてみたり、ウールとブレンドすると乾きやすくなったりして、機能的にいいものを開発するのに適している素材だといえます。ものづくりをしていくにあたって、リサイクルだから買う、サステナブルだから買うというということだけではなく、良い品質や良い機能だから選んだアイテムがたまたまリサイクル素材だった、というのが理想的かなと思います。

    WUNDERWEAR "ONE"50/50 70/30 4,620円~ 13色展開、ウールの配合率によって選べる2つのタイプ。 70/30は、ウール70%、リサイクル・ポリエステル30%。登山などの活動量が比較的少ないシチュエーションで活躍します。 50/50は、ウール50%、リサイクル・ポリエステル50%。山中を長時間走り続けるような、活動量が多いアクティビティに。

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    アウトドアインナーにもおすすめのコットンタッチのドライコットニー

    「続いて定番のTシャツも紹介させていただきます。ドライコットニーといって、コットンタッチですがポリエステル素材のもので、ヘビーウェイトで度詰めにしてある仕様です。普段着にはもちろん、登山などのアウトドアのインナーにもおすすめです。ベーシックという、もう少し軽い素材のものもあり、こちらはトレイルランニングなどアウトドア+αのスポーツのインナーなどにもおすすめです。乾きやすさや着心地がサラサラしているというのが人気の理由です。カラーバリエーションがたくさんあるというのもBRING™の特長でして、ヘビーウェイトで4色、ベーシックで9色展開されているので、好みやシーンで選んでいただければと思います」

    DRYCOTTONY HEAVY WEIGHT T-shirt  6,380円

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    BRING T-shirt Basic DRYCOTTONY. 4,730円

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    昔ながらのバスクシャツをポリエステルでアップデート

    「ボートネックのバスクシャツも紹介します。こちらも、コットンタッチでポリエステル100%のドライコットニーでつくられています。昔ながらのバスクシャツって綿100%のものが多くて気温が上がってくると着づらくなると思いますが、このアイテムは乾きやすく、着心地もサラっとしているのが特長です。さらにはU Vカットの機能も備わっているので、レジャーなどにもおすすめです」

    DRYCOTTONY バスクシャツ 8,980円

    ワールドブランドもBRING™オリジナルのリサイクルテクノロジーに注目

    ――BRING™のリサイクルテクノロジーや、さらには日本のリサイクルテクノロジーの現状について伺えますか。

    「BRING™の原料の95%は残反や残糸を使っていて、残りの5%は店頭回収したポエステル100%繊維を使っていて、100%繊維由来です。ポエステルは汎用性が高いので、Tシャツ生地にもスウェット生地にもデニム生地にもなります。可能性はまだまだ広がっています。日本のリサイクルは分野によっては結構ストイックにやっているところもあるのですが、それをみんな意外と知らないことが多いんです。例えば使用済ペットボトルは約9割回収されていて、日本は海外に比べて圧倒的に高い回収率です。それに、服から服をつくっている私たちのようなブランドも他にはないと思っています。再生原料を使用するブランドとしては、patagonia(パタゴニア)さんが進んでいるかと思うのですが、BRING™の再生原料も採用していただきました。下げ札にも“BRING Technology™”と書いてあります」

    「直接BRING™を体験できる場所」を増やしたい

    ――最後に、BRING™の今後についてお聞かせください。

    「今、直営が1店舗しかなく、直接BRING™を体験できる場所というのが少ないので、新たな店舗をさらにつくりたいなと考えています。今年の夏頃から後半頃には、もう少し山に近いロケーション、アウトドアを体感できるフィールドで出店したいなと思っています。また、恵比寿店ではいつでも服の回収を行なっており、服ならどのような素材でも回収しますので、ぜひ不要な服を持ってきてください。
    服を持ってきていただいた方には、BRING™の10%OFFクーポンを差し上げております。サーキュラーエコノミーを持続するためには経済と環境の両立が必要です。皆さんに楽しくお買い物していただけるように、そのような取り組みも行なっています。」

    近年、サステナブルな観点から再生素材の生地で服をつくるブランドも増えているが、BRING™のように不要な服の回収から独自のリサイクルテクノロジーでリサイクルし、オリジナルのアパレルブランドを展開して資源の循環を実現しているところは稀な存在かと思う。この取り組みがこれからのアパレルの形なのでないだろうか。


    【BRING EBISU】
    東京都渋谷区恵比寿西2-9-8 大澤ビル1F
    open 水・木・金・土12:00~19:00(祝日および当社が別途定める日は休業日)
    phone 03-4400-1251


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    • 伊藤孝法
    • 話を聞いた人

      伊藤孝法

    • 北海道生まれ。中目黒の老舗セレクトショップOUTPUTオーナーで、さまざまなブランドのセールスやPRを手がける。
      2014年、WWDファッショニスタ100人がリコメンド!に参加。
      テキスタイルデザインや自身のYOUTUBEチャンネル、北海道でFM番組のパーソナリティーも担当している。

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