普段、私たちが何気なく使っている革ですが、実は製品になるまでに様々な手間・工程があります。その工程は約17〜20。そのなかでも特に大事な工程が“なめし”と言われているもの。なめしとは、腐敗したり硬くなってしまう動物の皮になめし材を結合させ、安定した革に変化させること。写真は植物なめしのハイライトと言えるピット槽。植物タンニン溶液の入ったピット槽に皮を漬け込み、使用に耐えうる革へと変化させる工程です。一般的な革で約3週間、濃度を変えて（薄い濃度から濃い濃度に）いきながら丁寧に付け込んでいきます。その後、水絞りや加脂、乾燥などの工程を経て製品革が完成します。この植物なめしの他、専用の化学薬品を使用したクロームなめしなど、なめし方の違いにより革の仕上がりが違ってくるのも面白いところです。

革の種類は実に多彩です。牛革（カウレザー）をはじめ、馬革（ホースレザー）、豚革（ピッグスキン）、やぎ革（ゴートスキン）、ひつじ革（シープスキン）、シカ革（ディアスキン）など様々。世界中で最も多く流通しているのは牛革ですが、日本の場合は原皮をほぼ輸入に頼っているのが現状です。また、部位（ショルダーやベリーなど）によって呼称も変わり、さらにメス／オス、生後の経過年（月）などでも細かく分類されています。馬革はお尻の部位の革であるコードバンが有名。このコードバンは非常に丈夫で、長く使う程に特有の表情へと変化していきます。上記の他にもヘビ、トカゲ、ワニなどの革であるエキゾチックレザーもあり、さらに仕上げや加工の種類で細かく分類することもできます。ここではとてもじゃないけど全てを書ききれませんが、一口に革といっても非常に奥が深いものなんです。

皮を革へと変え利用する“なめし”という行為はかなり古くから行われており、紀元前から行われていたといいます。この行為を“利益の追求”にした形がタンナーです。ヨーロッパでは古くからあるタンナーが数多く存在しており、著名なメゾンもこぞって利用してきました。同じ素材（原皮）を使用してもタンナーごとに仕上がり・風合いが異なるのも魅力のひとつ。ここ日本でもタンナーは古くから存在していましたが、陽の当たる存在というよりは、縁の下の力持ち的存在でした。しかし、近年では日本でもタンナーが注目されつつあります。そのきっかけになったのが栃木レザーの存在。牛革の植物鞣しを得意とするタンナーで、丁寧な仕上げで各方面から注目を集めました。写真のアイテムのような経年変化（エイジング）の良さも特徴です。

素上げの革の風合いも魅力的ですが、近年は加工技術も向上し、手を加えた革も人気を博しています。代表的な加工のひとつに型押しがありますが、型押し革での一番の人気はサフィアーノレザー（写真）と呼ばれるもの。細かな角シボが上質な表情を生み、水やひっかきなどにも強いのが特徴です。世界的に有名なメゾンが使用したことで人気に火が付きました。他にもシュリンクレザーが最近再注目を浴びています。これはなめしの段階で縮みを促進させる薬品を使用することで、よりソフトでキメの細かいシボを作れるようになったからだと考えられます。ドイツ、ペリンガー社のシュランケンカーフが有名で、こちらも有名メゾンが使用していることで話題になりました。この2つの革に関しては日本のブランドでもよく使われているので、注視してみてはいかがでしょう。