MIYAVIインタビュー音楽と、人と、希望と サムライギタリストが旅で得るもの

InterviewMIYAVI
Photos:TATSUYA YAMANAKA(stanford)
Text:HIROMI YAMANISHI(HISTOREAL)
2020.4.15
ギタリスト、ボーカリスト、俳優、モデル、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)親善大使として、ワールドワイドに活躍。世界中を旅するMIYAVIさんが、12枚目のオリジナルアルバム「Holy Nights」を4月22日にリリース。世界に向ける思い、今この時代だからこそ伝えたい音楽、意外な旅の必需品までを語ってくれた。
MIYAVI

旅はかけがえのないものを
“五感”で感じさせてくれる

エレキギターで、ピックを使わずに全て指で弾く独自の“スラップ奏法”を確立し、"サムライギタリスト“として世界中から注目を集めているMIYAVIさん。ミュージシャンとして8度のワールドツアーを成功させた傍ら、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の親善大使としても活動。2020年に入ってからもすでに、コロンビア共和国、アメリカ、ハワイと、世界を飛び回っていた。

MIYAVI

「2020年に入って旅した土地で、一番印象深かったのはコロンビアですね。ブラジルでのショーの前に、親善大使としてベネズエラとの国境付近に行かせていただいたんです。ベネズエラでは400万人近い難民がいて、これはシリアに次ぐ世界で2番目の数。コロンビア自体も決して安全ではないし、国として余裕があるわけではない。でも国境を開放して隣国を助けているその在り方に、僕は心を動かされました。

文化や価値観が違う人たちに出会って学ぶことは、かけがえのないことばかり。視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚の“五感”でその国独自のものを感じられるのは、旅でしか味わえないもの。だから、僕は旅を続けます」

ミュージシャンとしても、MIYAVIさんが大事にしているものは、“聴覚”だけではない。ステージでのファッションは、”視覚“で訴えるために重要だ。

「僕はギターだけを弾いているギタリストではなく、全身を使ったパフォーマンスで、ミュージカルの舞台にあがるような感覚で表現をしています。そのために機能性と美しさが共存し、融合されたファッションは重要。音楽家は聴覚だけで訴えるべき、と いうルールなんてない。いろんなエンターテインメントの方法があっていいと思っています」

MIYAVI

世界中を飛び回るMIYAVIさんが、旅に欠かさず持っていくもの。それは意外なものだった。

「僕は太陽のパワーと大地のエネルギーを、同時に感じたい。世界中の地面に座ったり、寝転んだりするために、ヨガマットを持ち歩いています。でも、ヨガをするわけではないです(笑)」

日本のミュージシャンとして、世界中でプレイするMIYAVIさんが、「旅に必ず持っていくファッションアイテムは?」と聞くと……。

「あとは、ふんどし、ですね。ファッションアイテムかどうかはわからないですけど(笑)。今もはいていますよ。ここ5、6年愛用していますが、血流を止めないという健康上の利点もあるし、手洗いが簡単だから旅先に便利です。最高ですよ、僕は女性にも断然リコメンドします!」

MIYAVI
2020年の世界に寄り添う
アルバムをつくりたかった

12枚目となるオリジナルアルバム「Holy Nights」は前作「NO SLEEP TILL TOKYO」から、約9か月という短い期間でのリリースとなった。

「“日本人の音が世界中に鳴り響くことをあたりまえにしたい”という思いをこめてつくっています。前作のリリースを経て、8度目のワールドツアーを敢行して、ヨーロッパ、アメリカ、アジア、日本……各国のオーディエンスからもらった熱をそのまま込めたかった。そして出来上がったのが、このアルバム『Holy Nights』です」

ギタリストとして数々のタイトルをリリースしてきたMIYAVIさんだが、この「Holy Nights」は、ソロ歌唱アルバムとなっている。

「海外に出て勝負するときはやはりギタリストとして勝負したい、ギターで表現したいという思いが強かったんです。でも応援してくれる方々にとっては、MIYAVIの声も作品の一部だということ、そして僕も直接、言葉で伝えたいことがたくさんある。なので、今はボーカルとしての自分の存在にも重きを置いたスタイルでやっていきたいと思っています。2020年はもう1枚アルバムを出したいと思っています!」

MIYAVI

2020年は東京五輪の延期もしかり、「日本は岐路に立っていると思っている」とMIYAVIさんは言う。

「今、僕たちは日本に暮らしていますが、ふと世界を見渡せば、難民問題や異常気象、そして新型コロナウィルスによるパンデミック……、世界が直面している問題に、僕たちがどう向き合っていくのか。その意味で2020年はとても大事な年だと思っています。そして、そんな時代に僕たち音楽家は何ができるのか、何を歌うべきなのか? 僕は、実際に音楽が世界を変えることができなくても、人の心は動かすことはできると思っています。

“僕らはうたう 傷だらけ 手をつないだまま”。『Holy Night』という曲の歌詞の一部です。どれだけ心が傷ついて、肉体的に辛い状況にいても、人は、音に希望を乗せて歌う。人類の歴史の中で、音楽はずっと時代と寄り添ってきたと思うんです。ラブソングや青春ソングだけではない、僕は今のこの時代に寄り添う楽曲をつくりたかったんです」

MIYAVI

旅した数々の場所からもらったパワーを詰めこんだアルバム「Holy Nights」に収録された楽曲の歌詞の多くは、英語と日本語がミックスされている。

「“英語で歌えないから日本語で歌う”ということがイヤだったので、今までの曲の多くを英語で歌ってきました。でも、今のグローバルな音楽シーンでは、いろんな言語が使われている。自分の中で英語での表現が自由になってきた今、僕も“もっと日本語で表現してもいいんじゃないか”と思うようになったんです。英語と日本語をミックスすることで、表現の自由度も広がりました。

この時代だからこそ歌えること、歌いたいことはたくさんあって、それを“よりたくさんの人にも響かせられるように”、そういうスタンスに変わってきています。たくさんの人にアルバム『Holy Nights』を聴いて欲しいですね」

奇しくも新型コロナウィルスの影響で世界中がふるえている今。MIYAVIさんが世界中のオーディエンスから受け取った熱が込められ、音に希望を乗せて歌われた「Holy Nights」は、そんな今を乗り越えられるよう、私たちに寄り添ってくれるアルバムだ。

Profile
MIYAVI

1981生まれ。バンド活動を経て、2002年よりソロ活動を開始。2004年メジャーデビュー。現在まで約30か国、350公演以上のライブを敢行。2016年日本公開のアンジェリーナ・ジョリー監督映画「Unbroken」で俳優として、ハリウッドデビュー。国内でも2018年「BLEACH」「ギャングース」など、数々の映画作品にも出演。2017年にUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)親善大使に就任。

Information
Holy Nights

「Holy Nights」
6000円+税(初回限定盤A CD+DVD)
6000円+税(初回限定盤B CD+DVD)
2800円+税(通常盤 CD)

4月22日発売
ユニバーサル ミュージック Virgin Music

楽天モバイルCMナンバーとなっている「Bang!」、矢沢永吉の「止まらないHa~Ha」、沢田研二「TOKIO」をMIYAVI流にアレンジしたカバー曲、ライブでの人気曲「Hands To Hold」など、12曲を収録した12枚目のオリジナルアルバム。

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