ワカサギ編

サラリーマンアングラー釣り五郎がゆく!その5

準備した仕掛けやエサの付け方、そして誘い方をその日の状況に応じて、微調整しながら獲物を狙う。経験や柔軟な対応力がモノをいうが、初心者が大物を釣るビギナーズラックもある。それが釣りだ。学びも多く、ビジネスとの共通点もある。そんな趣味を通じて、仕事でもプライベートでも一歩一歩、成長していく男の物語である。

Illustration : MIKI TANAKA
Text : SHINSUKE UMENAKA(verb)

2020.3.16

登場人物
  • 魚釣五郎
    魚釣五郎(30才)
    うおつり ごろう。あだ名は“釣り五郎”。職場は海川商事。好きな寿司ネタはエンガワ
  • 鰒田一平
    鰒田一平(52才)
    ふぐた いっぺい。魚釣五郎の上司。休日は釣り三昧。好きな寿司ネタはヒカリモノ
  • 舟山杜氏
    舟山杜氏(68才)
    ふなやま とうじ。五郎が勝手に“師匠”と命名。神出鬼没のアングラー。好きな寿司ネタは赤貝

ビジネスチャンスを逃すな!商機をモノにする素早い動きが大きな差に

ワカサギ編

サラリーマンアングラー釣り五郎がゆく!
今回のターゲット
今回のターゲット【ワカサギ】

ワカサギ

氷に穴を開けて、そこから釣る冬の「氷上の穴釣り」が有名だが、9月ごろから翌春までがシーズン。市場価格は1kgで約3,000円。

週末に小さいながらも、念願のマダイを釣り上げた五郎は上機嫌で出社した。すると、早速、鰒田課長に呼び出された。労いの言葉でもかけてもらえるのかと課長のデスクに向かった五郎だったが……。

魚釣
魚釣「さすが課長は耳が早いですね。週末の釣果のことですか?」
鰒田
鰒田「週末の釣果? なに言ってんだよ、先週のノルマのことだよ! 少しは成績が伸びてきたと思ったのに、なかなか続かないなぁ。いい時こそ、“手返しよく”やってくれないと!」
魚釣
魚釣「これでも、ちょっとは成長しているんですよ、僕も。ちなみに“手返し”ってどういうことですか?」

いきなりのヒットにこれまでにない手応えを感じる

私の話を聞く前に、言いたいことだけを口にして、課長は去ってしまった。結局“手返し”の意味を聞くことができなかった。そういえば、課長は先週、札幌に出張していたっけ? ひょっとしたら、そこで何かを釣ってきたのかもしれないな。だから釣りの例え話を披露したのかも。

調べてみると、北海道ではワカサギがシーズン真っ只中だった。寒い地域では氷上の穴釣りがメインだが、関東でも釣れるという。しかも、河口湖などではドーム船という暖房設備が整った船でのワカサギ釣りが盛んに行われているそうだ。よし、これはもうワカサギ釣りに行くしかない。未消化だった有休を使って、翌日、五郎は河口湖にやってきた。

「河口湖レイクサイドコテージ」のドーム船

ネットで釣果を調べた結果、とくに最近調子が良い「河口湖レイクサイドコテージ」のドーム船を選んだ。受付を済ませると小さなボートに案内され、湖上に浮かぶドーム船まで連れ行ってくれた。船は20人くらい入るサイズで固定されており、揺れもない。しかも、中は暖房が効いていて快適だ。各釣座には30センチ四方くらいの穴が空いており、そこから仕掛けを落として釣る仕組みになっている。ワカサギ釣りは長さ30センチくらいの小型の専用竿を使うのが一般的だ。一式レンタルすることもできるので、初心者にも優しい。指定された釣座に座ると、スタッフさんがやってきて、餌の付け方から、誘い方、釣れたときの針の外し方まで丁寧に説明してくれた。

魚釣五郎

仕掛けを底まで落とし、そこから30センチくらい、巻き上げたら、竿を軽くシャクリながら、当たりを待つのだ。シャクリはマダイで覚えたので、不安はなかった。試しに仕掛けを落とすと、すぐにプルプルとしたあたりを感じた。急いで引き上げると、さっそくワカサギがかかっていた。なんだ今回は楽勝じゃん!

チャンスを逃さない!スピード感が大きな差に

その後も、続々とヒットし、ワカサギがかかる。聞けば、河口湖のワカサギはサイズが大きいそうだ。一度、あたりを感じた後、少し巻き、引き続きシャクり続けると、竿の重さが変わるのがわかる。それを引き上げると、二匹、三匹とワカサギが複数かかってくるのだ。まさに入れ食い状態。しばらく夢中になって、五郎は釣りを続けた。興奮して気づかなかったが、またしても師匠が隣に座っていた。どこにでもいるなぁ、この人は。しばらくすると、パタリとあたりがなくなってしまった。さっきまでの入れ食いが嘘のように何の反応もない。ちょっと休憩しようと、トイレに立つと、師匠のバケツが目に入った。すでに数百匹は釣っているだろうか!? あまりの釣果の違いに五郎は驚いた。

「ワカサギが回遊してきたら、チャンスタイムなんだよ。あそこにある魚探が真っ赤に反応しているでしょう? そんなときは入れ食いになるから、手返し良くやらないと釣果も伸びないよ」

私の視線に気づいた師匠が説明してくれた。確かに釣れたワカサギの針を外し、餌を付け直して、再度、仕掛けを投入するという動作をハイスピードでこなしている。のんびりと釣っているのは自分だけだったのだ。

魚釣五郎と師匠

釣れない時間は必ず来る。釣れるときにいかに多く釣るかの勝負

なるほど、課長が言っていた“手返し”って、「仕掛けを回収してから、再び仕掛けを投入するまでの一連の動作のこと」だったのか! だったら、そうやってくれればいいのに……。

海釣りでも、時間帯や潮の流れによって釣りやすくなったり、あたりすらまったくないこともある。ワカサギ釣りでもそれは同じなんだな。待てよ、釣りに限らず、仕事でも景気の波やブームがある。それを逃さずに、素早く動いた人が大きな成果を出すってことを課長も言いたかったのか……。よーし、自分も手返し良く釣るぞ!

「もう群れはいなくなったよ」と、釣座に戻ると師匠がつぶやいた。

驚いて魚探のほうを見ると、さっきまで真っ赤に染まっていた群れの反応がなくなっていた。そして、その後、群れが回遊してくることはなかったのだ。それでも50匹くらいワカサギを釣ることができ、満足感に浸っていた。しかし、師匠の釣果を聞いて愕然とした。その数、なんと1900匹。ケタが違う……。自分の腕のなさを痛感させられたのだった。

ワカサギ釣りの釣果

今回の格言「チャンスに素早く行動!」で成果に大きな差が

釣ったら食うべし 簡単レシピ紹介「ワカサギの天ぷら」
河口湖レイクサイドコテージ
information河口湖レイクサイドコテージ山梨県南都留郡富士河口湖町長浜2183
TEL:0555-20-4511

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