機能美と意匠を併せもち、モノ好きが唸る奥深い世界。それが料理道具。今回、取り上げるのは「お弁当箱」です。ランチ代を節約するため、健康のため、あるいは会社の周辺に飲食店が少ないなど、さまざまな事情から、お弁当を持参して通勤する人も多いでしょう。また、これからはお花見の季節。お弁当を持ってのお出かけを検討している人もいると思います。そんなとき悩むのがどんなお弁当箱を選ぶべきかということ。そこで日本で唯一、料理道具コンサルタントの肩書きをもつ、荒井康成氏がオススメの逸品を紹介します。
Styling&movie&photo:YASUNARI ARAI/Edit&Text:SHINSUKE UMENAKA(verb)
2020.3.16
お弁当箱を購入するとき、どういうポイントを重視して選んでいますか? カバンへの入れやすさを重視したサイズ感でしょうか? あるいは容量や見た目でしょうか? それとも保温性や洗いやすさといった機能性でしょうか? 最近はさまざまなタイプの商品が売られているため、何を買えば良いのか迷ってしまいます。
たとえば詰める具材が和食中心なのか、それとも洋食も選択肢に入るのか、料理のジャンルで選ぶというのもひとつの手です。
もし、健康志向で和食が中心の食生活だというなら、木製のお弁当箱がオススメです。いわゆる「曲げわっぱ」と呼ばれる、杉やヒノキを加工してつくられたお弁当箱は木がもつ特性により水分をほどよく吸収してくれます。そのため時間が経って冷えてもベトつかず、ご飯やおにぎりが美味しくいただけるという特徴があります。おにぎりを詰めるのに最適な竹製のお弁当箱も同様です。ほんのりと漂う木の香りが、和食の風味を損なうことなく、食欲をそそるのもこうしたお弁当箱の醍醐味です。反対に洋食を頻繁に詰めてしまうと、滲み出る油分によって、木が痛んでしまうので注意しましょう。
いまは料理のジャンルまで配慮してお弁当をつくっていないけれど、最近、体重や体調が気になり出した。そんな人は木製のお弁当箱を買って、それに合わせて食生活を改善するというのも良いかもしれません。
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雅竹
「すす竹アジ口網み弁当」大分県で竹製品の製造・販売を手掛ける株式会社ヤマキは、“伝統の技・新しいデザイン”をコンセプトとした雅竹を発信しています。竹を高圧釜で蒸し焼きにして、炭化加工をした素材(すす竹)を網代網みという技法で仕上げます。竹は通気性と抗菌性に優れているため、ご飯やおかずが蒸れずに安心して美味しく食べることができます。
参考価格 5,830円
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柴田慶信商店
「大館曲げわっぱ長手弁当箱」柴田慶信商店は、樹齢200年以上の天然杉を使用した伝統工芸品「曲げわっぱ」の製造・販売を行っている。秋田杉にこだわった曲げ物は、白木仕上げ(無塗料)で殺菌性に優れ、水分をほどよく吸収するのでご飯が冷めてもベトつきません。さらに、杉特有の爽やかな香りが食欲を掻き立てます。全て手作業でつくっており“親から子へ”“子から孫へ”を製造のコンセプトとしています。
ちなみに和食の基本は「五味・五色・五法」だと言われています。「五味」は人間が感じる味覚の基本のことで、「辛い味」、「酸っぱい味」、「甘い味」、「塩からい味」、そして「苦い味」を指します。
「五色」は食材の色合いのことです。「白」「黄」「緑」「赤」「黒」で器や料理を艶やかに整えることを良しとし、目でも楽しめる料理を目指します。
そして、最後の「五法」は、五種類の料理法を使うこと。伝統的な幕の内弁当や松花堂弁当、祝膳などを見ればわかりますが、和食でもてなす席では必ず「生で食べる」「煮て食べる」「焼いて食べる」「蒸して食べる」「揚げて食べる」という五種の調理法が使われています。旬の食材が持つ、旨味を最大限に引き出すことができるからです。
毎回、「五味・五色・五法」のすべてを押さえつつ、お弁当づくりをすることは難しいと思いますが、こうした和食の基本を心がけると、より健康的に和の食材を味わうことができます。何気なく食べていた「お弁当」が、和食との相性が良い「木のお弁当箱」を新調することで、贅沢な時間に変化するのではないでしょうか。
いきなり和食だけではハードルが高いという人には、木蓋付きのステンレス製フードボックスがオススメです。杉の木蓋が余分な水分を吸収してくれるという木製の良さと、油分にも強いステンレスという、いいとこ取りのお弁当箱です。
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「木蓋付きフードボックス ステンレス」
殺菌性と通気性に優れている経木の役目をもたせるため、蓋に樹齢200年の古代杉を使用しています。杉は食べ物の余分な水分を吸い取るため、べとつきにくく、冷めてもご飯が固まりにくいのが特徴です。本体のステンレス部分には金属加工で有名な街「燕三条」が製造。男女や年齢層が関係なく使用できる、シンプルで無駄のないデザインが高ポイントです。
参考価格 6,050円
むしろハンバーグやナポリタンなど、洋食もおかずに入れるという人には、油分に強く、洗う時の手間もかからないホーロータイプやステンレス製がおすすめです。におい移りや雑菌の繁殖がしにくく、清潔感が保てるというメリットがあります。電子レンジが使えないというデメリットがありますが、ホーロータイプなら直火にかけたり、ストーブの上に置いて加熱することで、温めて食すことも可能です。
洋食もお弁当に入れるという人なら、こうしたホーロータイプやステンレス製のお弁当箱を選びましょう。
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倉敷意匠「琺瑯弁当」
岡山県・倉敷市を拠点としている倉敷意匠と、布小物作家・イラストレーターmitsou氏によるコラボレーション商品。国内メーカーとして品質に定評がある野田琺瑯の製品を使用し、どこか懐かしさを感じさせるmitsou氏のイラストが目を引きます。ホーローの特徴として、におい移りや雑菌が繁殖しにくく、オーブンでの温め調理も可能です。お弁当箱以外に、裁縫道具や文房具を入れたりなどのさまざまな使い方ができます。
参考価格 3,960円
家庭でつくったお弁当は節約という面では良いのですが、ひとつのネックがあります。それはお店のランチとは違い、熱々のできたてが食べられないという点です。朝、自宅でつくって持参するため、どうしても冷めてしまいます。
冷めても美味しいというのが、お弁当ではありますが、それでも温かいランチを食べたくなる気持ちもわかります。そんなときは電子レンジで温めることができるプラスチック製のお弁当箱が選択肢にあがりますが、せっかくならサステナブルな素材を使ったお弁当箱はいかがでしょうか?
電子レンジで温めることができるだけではなく、土に埋めると分解され、自然に回帰します。また、サーモスのお弁当箱なら保温機能により、朝つくったときの温かさを保つことができます。
サイズやデザインだけではなく、料理のジャンルや、保温性などでお弁当箱を選んでみるのもオススメです。
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麦わら繊維「LUNCH BOX」
環境を守るという観点から、天然材料のみを使用。プラスチックとは違い、土に埋めた時に自動で分解して自然に回帰します。食べ物のにおいを混ぜない仕切り割や、味混ぜ・漏れ防止をカットする四方ロックが特徴的です。食器洗い機、電子レンジ、冷蔵庫など幅広く応用が可能。そのほか、お弁当箱の熱と圧力を開放するエアバルブ機能付きです。
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サーモス
「フレッシュランチボックス
2段式/DSD-1103W」100年以上の歴史を持ち、魔法瓶や家庭用品の製造・販売を行うサーモス。ステンレス製のランチボックスは、色とにおい移りがしにくいのが特徴です。密閉性のある蓋と、外気を遮断して保冷効果を高める専用ケース付き。食洗機対応のためお手入れも簡単です。ご飯を食べ終わったら下容器に上容器を入れて、コンパクトに収容できる点も魅力的。
参考価格 2,680円
荒井 康成 YASUNARI ARAI
料理道具コンサルタント/Kitchenware Stylist
洋菓子店店長、和陶器店主を経て、フランス陶器エミール・アンリ社の日本法人設立に携わる。以後、日本初の「料理道具コンサルタント」として独立し、「料理通信」「ELLE gourmet」など、各食情報誌でのコラム執筆やスタイリング撮影、Panasonic「ふだんプレミアム」や魔法びんのパイオニア「サーモス」のInstagramディレクション、「キユーピーサラダクラブ」や「カルビーフルグラ」など食品会社の販促物スタイリング撮影、食の学校「レコール・バンタン」では講師として、多岐に渡り活動中。著書に「ずっと使いたい世界の料理道具」(産業編集センター刊行)。http://www.araitools.com