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Life is just a journey. さあ、支度しよう

人生ってまさに旅。

良いことばかりは続かないけど、
悪いことばかりも続かない。

いつだって楽しもうとすることを大切に、
ポジティブな気持ちで、支度しよう。

春のお買い物の参考に、
旅に役立つアイテムをご紹介。

中村獅童 スペシャルインタビュー

すべては風まかせ 気ままな旅で充電する中村獅童の休日

特別な予定のない数日間の休日。
春の陽気の誘われるように思い立って、旅に出かける。

行くあても決めぬまま、気分に任せて街を彷徨う。

綿密に計画された旅の満足度は高いが、
こんな行雲流水な旅路もまた楽しい。

旅について中村獅童さんと語りつつ
春のお出かけに最適な大人のコーデを撮影した。

また6月に京都・南座で予定されている
超歌舞伎について語ったインタビューも必読だ。

Photos : TSUBASA YOMIYA
Styling : AYATO TOMIDA
Hair&Make : masato at B.I.G.S. (marr)
Text : SHINSUKE UMENAKA(verb)
2020.3.16
Interview SHIDO NAKAMURA

まさに気ままな旅
移動しながら宿の予約をする

18年前、スキンヘッドで眉毛もなし。命をかけて卓球に打ち込むドラゴンという青年役を映画のオーディションで勝ち取り、一躍脚光を浴びた中村獅童さん。いまもなお古典歌舞伎をはじめ、テレビドラマや映画への出演、そして新作歌舞伎の創作など、ジャンルを問わず、表現の可能性を探究し続けている。男気があり、奔放。素顔はそんな印象のある中村獅童さんだが、旅のスタイルも気持ちがいいくらい自由気ままだった。

「歌舞伎の舞台があると、数ヶ月間は1日も休めません。加えて映画やドラマの撮影もあります。だから、ちょっとでも休みができると、出かけないと損した気分になるんですよ。先日も数日、撮影が空いたので家族で温泉に行ってきました。群馬、長野、新潟、それから軽井沢を周って帰ってきたところです」

ぐるりと温泉地を巡ってきたという。あまりのフットワークの軽さに驚いていると、こう続けた。

「最初の1日目だけは前日くらいに宿を予約しておいて、翌日からは移動しながら予約していきます。そのときの気分で次はどこに向かおうかなって決めるんです。夏もドライブをしていて気持ちよさそうな海があったら、“この辺りで泳ごうよ”って奥さんを誘って、海に入ることもありますよ」

想像以上に風まかせ。2017年に家族が増えてからは、我が子にいろいろな経験をさせたいと、旅の頻度も増えているようだ。

「0歳のころからあちこちに連れて行っているので、海外旅行にも慣れています。車での移動だと人様にも迷惑をかけないし、自由に休憩が取れますから、アグレッシブに出かけています。船の模型を見ると喜ぶので、先日は久里浜からフェリーで千葉まで遊びに行きました。昔よく妻とデートで乗っていたんですよ」

スタイリング

インナーはオリエンタルかつノイジーな存在感が印象的なホワイトマウンテニアリングのコーチジャケット。獅童さんが持つパブリックイメージとも見事にマッチしている。引き締め効果のある黒のコートを合わせることでより個性が際立つ。

オリエンタルかつノイジーなインナーは黒で引き締める
衣装協力
コート93,500円、コーチジャケット60,500円/ともに、ホワイトマウンテニアリング(ホワイトマウンテニアリングTEL:03-6416-5381)、パンツ、カットソー/ともに、スタイリスト私物

ラスベガスのカジノで食べた
中華レストランの絶品カレー

まさに行き先は気分次第。海外旅行では直前の予約はリスクが増すため、さすがにもう少し計画性を持たせるが、スタンスは変わらないという。

「ハワイでお気に入りのバンドのライブを見て、そのまま行ったことがなかったサンフランシスコに飛んだこともあります。ビッグサーという崖にあるホテルに泊まって、LAまで南下しました。ラスベガスからセドナ、パームスプリングス、そしてLAまでを車で訪ねるドライブ旅を家族でしたこともありますよ。レンタカーをラスベガスで借りて、LAで返却。何十時間も運転しましたが、どこまでも続く一直線の道をドライブするのは気持ちいい体験でした」

恐れ入る行動力。ファッショニスタでもある中村獅童さんにとって、旅先での買い物も楽しみのひとつだ。

「アメリカでは郊外にあるアウトレットなんかにも足を運びます。LAの店舗も品揃えが豊富ですごくよかったな。購入したものが、たまたま日本では未発売なケースも多くて、それがわかるとラッキーってちょっとテンションがあがります」

また、旅先での食事も記憶に残っているものが多いという。

「ラスベガスにショーを見に行ったときに、カジノの中に中華レストランがあるのを発見して、そこで食べたんだけど、カレー炒めみたいなメニューがすっごい美味しかったな。中華屋のカレーが好きで、六本木の香妃園にもよく行くし、けっこう研究しているんです。カジノのカレーは、うちの妻もめちゃくちゃ気に入ってましたね。彼女とは恋愛しているときから食べ物の趣味が合うんです。家族になると余計に食の相性って大事だと思います」

本人たちは絶対に知らないはず。
健康センターでの意外な出会い

旅行に加え、仕事柄、地方での公演や撮影も多い。そんなときはひとりでご当地グルメや地方の名店を訪ねるという。

「名古屋での公演なら、ひつまぶしと『味仙』っていう台湾ラーメンのお店は必ず行きます。そこはテーブルが円卓になっていて、絶対に知らない人と相席になるんです。でも、最近はみんなスマホを見ながら食べているから、まったくバレない。地元の方と知り合うと良いお店を紹介してくれるんです。こないだは小倉で有名な『天寿し』っていうお店を紹介してもらって、たまたま空きが出て入れたんだけど、びっくりするくらい美味しかったですね。こういう出会いも旅の楽しみです」

また、実は自宅を建てた際にサウナ室をつくったほど、サウナ愛好家として知られる中村獅童さん。地方でもサウナに行くのかと話を振ると、健康センターを中心に地道な営業活動をしていた、あの紅白出場グループとの意外な接点を語ってくれた。

「埼玉の草加健康センターが好きで、妻とも昔、行ってたんだけど、ある日、おばちゃんたちが“わーきゃー”騒いでるから、どうしたんだ?って思ったら、男性のグループが歌い出して。“へー、純烈っていうんだ。面白いね”って、こっそり見てたんだけど、その後、どんどん売れていって、紅白にまで出場したからびっくり。僕らが健康センターで目撃していたなんて、本人たちは絶対に知らないと思うな」

確かに宴会場で純烈に声援を送るマダムたちの中に、歌舞伎役者が混じっていたなんて、誰も想像もしないだろう。

ライダース×流行のストライプ定番アイテムもアップデート

スタイリング

定番のアイテムはそれだけでスタイルが決まり、旅先での出で立ちとしてもハズレがない。一方で見慣れたコーデになりがちだ。そこで流行の兆しが見えるストライプ柄のシャツや、スニーカーを合わせることでアップデート。

衣装協力
ライダースジャケット187,000円、パンツ58,300円/ともに、N.ハリウッド(ミスターハリウッドTEL:03-5414-5071)、シャツ35,200円/08サーカス(08ブックTEL:03-5329-0801)

映画もドラマも歌舞伎の良さを
再発見する“表現の旅”

そんな中村獅童さんにとって、旅はただの休息ではない。生き方そのものなのだ。

「海外に出かけると、治安とか日本の良さを再発見するじゃないですか。異国での新しい体験で一皮むけ、視野が広がります。それは仕事でも同じ。僕には歌舞伎という魂のふるさとがありますが、演劇やテレビドラマ、映画の世界で仕事をして何かを吸収して帰ってくる。いつもそんな表現の旅をしているわけです。そして、どうすればその経験を還元できるのか、歌舞伎のことを考えます」

セリフも聞き取りづらく難解。見たことがない人にとって、歌舞伎に敷居の高さがある点は拭えないだろう。しかし、かつては庶民の娯楽で、最先端のカルチャーだった。どうすれば、その原点に立ち返ることができるのか? 歌舞伎に馴染みがない人を呼び込み、虜にする。それが自分の使命だと考えているのだ。

「40歳を過ぎてから、ようやく歌舞伎に還元できるようになってきました。ロックコンサートに行けば、アーティストだけではなく、つい観客も観察してしまいます。どこにみんなが熱狂しているのか? 歌舞伎に取り入れられるものはないか? 常に根っこには歌舞伎があり、無意識のうちに考えている自分に気づきます。良いものを見たときには、同じ表現者として悔しいと思うと同時に、歌舞伎役者の血が騒ぐんです」

若い頃はロックに熱中し、ファッションにも傾倒した。しかし、歌舞伎にはそのすべてが詰まっていると気づいたとき、進むべき道がはっきりとしたという。倉庫で歌舞伎を上演するオフシアター歌舞伎や、絵本が原作の新作歌舞伎、そしてデジタル技術を演出に取り入れた超歌舞伎など、次々と新しい表現に挑戦している。

フィナーレはまるで
俺のロックコンサート

2016年にドワンゴが主催する「ニコニコ超会議」で上演された超歌舞伎はバーチャルシンガーの初音ミクが登場し、観客がペンライトを振る参加型の演出が話題となった。今年6月には京都・南座で2度目の上演が予定されている。

「インターネットで面白いものが氾濫している時代ですが、ひとつの空間に集まってみんなで泣いたり、笑ったり、夢をみたり、汗をかくのは、生の舞台の醍醐味。しかも、超会議は観客参加型です。かしこまって見るのではなく、大いに騒ぎながら、観劇してほしいですね。もしこれで興味を持って、古典歌舞伎にも興味を持ってもらえたらうれしいな」

演出として使用されるデジタル技術が話題に上りがちだが、ベースにあるのは古典なのだという。

「新しいことをやるときに常に意識しているのは、古典をベースにすること。派手な衣装も隈取りと呼ばれるメイクも、すべて古くから歌舞伎で使われているものです。でも、デジタルに負けない派手さと、遠くからでも映える迫力がある。そこも斬新なもので塗り替えてしまうと、良いコラボレーションにはならないんです」

歌舞伎らしさが失われてしまえば、ただの変わった舞台にとどまってしまうわけだ。

「古典にこだわりつつも、フィナーレは自分のロックバンドのライブをやっているような感覚になります。『おい!おい!』って観客を煽る歌舞伎役者は他にいないよね。かつてロックバンドをやっていたときの獅童が出てきます。ロックとファッション、今までやってきたことが全て無駄じゃなかったって思うよね」と笑う。

中村獅童という男の人生はもちろん、歌舞伎の魅力も詰まった超歌舞伎。この観劇のためだけに京都へ旅しても損はないだろう。

カッティングや細部のデザインにこだわったコートが一枚ある安心感

スタイリング

天候の変化や気温差を考慮すべき旅では、サッと羽織れるコートやジャケットが欠かせない。多少の雨がしのげるタイプなら、なお良しだ。異素材とのミックスに定評があり、エレガントさも併せ持つTOGAならカジュアルにもフォーマルにも振れ、申し分ない。

衣装協力
コート108,900円、シャツ53,900円、パンツ42,900円/すべて、トーガ ビリリース(TOGA 原宿店TEL:03-6419-8136)