スペシャルインタビュー 川谷 絵音

川谷絵音に聞く「シャツ」へのこだわりと濡れゆく私小説

Interview
川谷 絵音
Photos : TATSUYA YAMANAKA(stanford)
Hair&Make : SUMIKO KUBO
Text : SHINSUKE UMENAKA(verb)
2019.10.15
大人の好きなモノ語り

表の顔はライブ映えする派手めシャツ
プライベートなB面はシンプルな黒シャツ

「indigo la End」「ゲスの極み乙女。」「ジェニーハイ」「ichikoro」など、バンドを複数掛けもちしつつ、プロデュース業にも精を出す川谷絵音さん。ファッションフリークでもあり、しばしば自身でMVやステージのスタイリングを手がけている。そんな彼の独特なファッション観、シャツへのこだわり、そして10月9日にリリースしたばかりのindigo la Endのニューアルバム『濡れゆく私小説』について聞いた。
ここ数年はシンプルなデザインが好みになり、普段は黒シャツばかり着ているという川谷絵音さん

川谷さんといえば、ステージ映えするビビッドなジャケットや派手なデザインのシャツを着ている印象が強い。しかし、それはあくまでTV出演やライブ用の衣装で、プライベートでは黒いシャツ一択だという。

「シャツは100着近く持っているのですが、ここ数年はシンプルなデザインが好みになり、普段は黒シャツばかり着ています。素材違いや、デザインの細部が異なる黒いシャツを30着は持っています。“黒シャツといえば僕”と認識してもらいたい気持ちもあるんですよ。」

シャツをお店で見かけたら無条件に買ってしまうという川谷絵音さん

同じデニムとシャツを愛用しているといわれるファッションデザイナーのアレキサンダー・ワンや、コム・デ・ギャルソンがトレードマークになっているサカナクションの山口一郎氏の影響も大きいと語る川谷さん。

「シャツは、もはや惰性で買っている感じすらあります。例えば、カレーって、つい食べちゃうじゃないですか? 途中で好きで食べているのか、わからなくなってきて、そんなに食べたいと思っていなくても、カレーにしちゃいませんか? シャツも同じで、お店で見かけたら無条件に買ってしまうんです。首回りが汚れるとクリーニングに出すのが面倒になり、買うこともあります」

とにかく試着は面倒で、楽器も試奏せずに買います、と話す川谷絵音さん

ベルトを付ける作業も億劫
試着で時間を取られるくらいなら、
サイズが合わない方がマシ

撮影で使用した白いシャツと緑のラインパンツのコーデ、そして、黒でまとめたモノトーンコーデのいずれも川谷さんの私物である。実は極度の面倒くさがり屋だという性格が、スタイリングやショッピングの仕方に影響しているという。

「ベルトを付けるのが面倒でシャツが多いのにスラックスはほとんど着ません。ウエストが紐かゴムのパンツばかりです。あと試着が好きじゃないんですよね。めんどくさくて。でも試着は基本断れなくて、したらしたで買わないとダサいやつだと思われそうだし、日和って買わなかったと思われるのもイヤ。だから無理やり買うことが多いんですよね。でもこのパンツも買って履いてみたら、意外としっくりきた(笑)。ただ、とにかく試着は面倒で、楽器も試奏せずに買います」

ベルトをパンツに通す作業が面倒。クリーニングに出すのも煩わしい。靴も履かずに購入し、楽器も試奏しない。サイズが合わないこともしばしばだが、試着をするくらいなら、そのほうがマシだという。

「試着するくらいなら、その時間を別のことに使いたい。100歩譲って、試着室で完結すればまだいいんですけど、店員さんが『すいません、どうですか?』って聞いてくるじゃないですか?それが苦手で。僕が鏡をみて、いいと思ったらもう脱ぎたい」

indigo la Endは一番パーソナルな活動だと話す川谷絵音さん

そんな川谷さんが10月9日にリリースしたニューアルバム『濡れゆく私小説』。複数のバンドで活動する中で、indigo la Endはどんな位置付けなのだろう? あらためて尋ねた。

「indigo la End から僕のキャリアはスタートしていますし、SNSのアカウント名にもしているくらい一番パーソナルな活動です。indigo la Endがあるから、ほかの活動が成り立っているとさえ思います。楽曲も過剰に装飾されていない、自分そのものだと言えます」

そういえば「濡れゆく私小説」というアルバムタイトルも意味深だ。何か明確なメッセージが込められているのかと思いきや、思いついたフレーズから曲を創作しているため、最後までどんなアルバムになるのか、ゴールが見えないという。

音楽とファッションをもっと融合させていきたいと話す川谷絵音さん

「曲づくりは曲名が先。今回のアルバムに『ラッパーの涙』という曲がありますが、パッとそのフレーズが思い浮かんだので曲名にしましたが、その段階ではメンバーはもちろん、自分でもどんな曲ができるのかわかっていません。そのタイトルに引っ張られるように、曲がだんだんできていきます。何曲かそうやって曲ができた段階で、なんとなく方向性が見えてきて、足りない曲を補っていくように制作していきます」

また、自身の中で“音楽とファッション”は密接に関係しているという。

「曲ができたら、こんな服でミュージックビデオをつくろうとアイディアが出てきます。ライブグッズをつくるときもファッションブランドを参考にしますし、海外のアーティストのように音楽とファッションをもっと融合させていきたいですね」

最後にアルバムの聞きどころを語ってもらった。

「今回のアルバムは間口が広くつくってあります。すごくJ-POPなサウンドかといえばそうでもない。玄人受けもするし、音楽が詳しくない人でも聞けるアルバムになっています。このアルバムからindigo la Endを聞いてもらって、ほかのアルバムも聴いてもらえたら、嬉しいですね。そんな入門書的な作品になっていると思います」

Profile

川谷絵音 (かわたに えのん)

1988年12月3日生まれ。長崎県出身。「indigo la End」「ゲスの極み乙女。」「ジェニーハイ」「ichikoro」という4つのバンドを掛けもちしながら、アーティストのプロデュース、楽曲提供なども積極的に行う。10月9日にindigo la Endのニューアルバム『濡れゆく私小説』をリリースした。
Information
indigo la End『濡れゆく私小説』

5枚目となるメジャーアルバム

『濡れゆく私小説』

indigo la Endの真骨頂ともいえる刹那的なラブ・ソング、歌謡曲の要素も感じられるキャッチーな楽曲、ストイックなメンバーの演奏と川谷絵音の歌声が激しく混ざり合う衝動的な楽曲が幅広く収録されており、そのどれもがリード曲ともいえる隙の無いアルバム。高い完成度を誇り、indigo la Endというバンドが2019年現在、どういった存在なのかこのアルバムを聴けば自ずと分かるはずだ。

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