機能美に惚れ込む 男たちの料理道具

vol.1鉄フライパン

機能美と意匠を併せもち、モノ好きが唸る奥深い世界。それが料理道具。
そんな料理道具を日本で唯一その肩書をもつ、
料理道具コンサルタント・荒井康成氏がレコメンド。
今回は「鉄フライパン」の魅力について語ってもらいました。 Styling&Movie&Photo:YASUNARI ARAI/Edit&Text:NAOMI ISHIGAMI(verb)

監 修

料理道具コンサルタント荒井康成氏

日本初の「料理道具コンサルタント」。各食情報雑誌でのコラム執筆やスタイリング撮影、食の学校「レコール・バンタン」の講師など、料理道具コンサルタントとして多岐に渡り活躍中。

エコな時代に価値が見直された、鉄フライパン

皆さんはふだん、どんなフライパン使っていますか? 多くの人は、フッ素樹脂加工された“こびりつきにくい“錆びない”フライパンを愛用しているのではないでしょうか。フッ素樹脂加工のフライパンは扱いやすく軽量なのがメリットで、料理初心者や非力な主婦たちから支持され、家庭用フライパンの主流となりました。ただし、フッ素樹脂は扱いを怠ると剥がれやすいため、耐久年数は1~2年程度。“使い捨ての料理道具”といっても、過言ではありません。

そこで注目を集めているのが、耐久性が抜群の「鉄フライパン」です。

2000年代に入り、「使い捨てないことが環境にも優しくスマート」という、エシカルな考え方が浸透し始めました。良質な素材から丁寧につくられた、丈夫な製品を長く使い続けたい。そんな人たちから、鉄フライパンが再び支持を集めたのです。

鉄フライパンの人気を後押しした、アウトドアブーム

とはいえ、鉄フライパンが持つ安価とはいえない価格、片手で容易に扱えない重量感、食材が焦げやすいなど、扱いづらいイメージは簡単に拭えません。

そのネガティブなイメージを払拭したのが、アウトドアブームでした。おしゃれにキャンプやバーベキューを楽しみたい人たちが、スキレットやストウブなどの鋳物鍋に注目。鉄製の調理器具は炭火料理とも相性が良く、一気にその存在価値が高まりました。

特に、心をわしづかみされたのは、男性たち。スキレットやストウブの良さを野外で実感し、男の料理を振る舞うべく家庭のキッチンに取り入れます。そんな彼らが真っ先に揃えたのは、鉄のフライパンでした。

IHと相性抜群!!
プロ並みの味を再現する、機能性にも着目

使い勝手よりも、無骨なデザインや重厚感に惚れ込み、勢いで鉄フライパンを購入してしまったという人もいるでしょう。しかし、まず知っておきたいのは、鉄フライパンの優れた機能性です。

特筆すべきは、熱伝導の均一さと高温維持効果。鉄フライパンは熱すると、底面・側面の表面温度がほぼ均一に保たれるので、どの面で焼いても焼きムラが起こりづらいといわれています。また、フライパンに食材を投入してもすぐには表面温度が低下しないため、調理時間が短縮できる点も大きなメリットです。

ちなみに、鉄フライパンの本領を特に発揮できる食材は、肉や卵。焼き加減が難しいステーキも、高温維持の効果で外はカリっと、中はジューシーに焼き上がり、野性味あふれるステーキが、家庭でも簡単に味わえます。卵焼きやオムレツ、パンケーキも同様に、短時間でふんわりとした出来ばえに。また、素材から出る水分をしっかりと飛ばせるのも、鉄フライパンの良さ。野菜炒めはシャキッと、炒飯はパラパラとプロ並みに仕上がります。自身の料理の腕が上がったと、ニヤリとしてしまうことでしょう。 そして、注目したいのは、鉄フライパンとIHクッキングヒーターが好相性という点です。フライパンの平面部分が電熱ヒーターにぴったりと密着するため、ガスレンジよりも火の入りが早い分、料理時間がさらに短縮できます。 鉄フライパンは、焼く、炒めるという調理において、最も理に叶っている道具。それが、おいしさに直結します。機能性をうたうフライパンが乱立する昨今ですが、鉄フライパンこそが、現代のニーズに一番合致する料理道具といえるでしょう。

使い込むほどに、愛おしさが増す料理道具

最後は、多くの人が懸念しているであろう、鉄フライパンの“手入れ”について。

「鉄フライパンは、使用前後に“シーズニング”が必要」と、聞いたことはないでしょうか。なんだか難しそうに聞こえますが、実は、それほどの手間ではありません。フライパンを火にかけて空焼きした後、フライパンに多めの油を入れて、表面に油膜を張るのみ。油は半日程度放置すると、なおいいでしょう

また、鉄フライパンには焦げやすいというイメージがありますが、このシーズニングひとつで、焦げにくさは断然、軽減します。フライパンを使用した後は、油のコーティングを剥がさないために、洗剤では洗わないこと。お湯で汚れを洗い落とし、空焼きをしてから油を入れ、ならしてから保管します。そうすることで、徐々に使い勝手のいいフライパンに育ちます。本来は、毎日使用することをおすすめしますが、3日おき程度の使用頻度でも問題なし。多少の手間がかかるところが、男性の心をくすぐるようですね。

毎日火を入れ、毎日手を入れれば、100年以上使えるといわれる、鉄フライパン。つくる料理や使用頻度によって、フライパンの表情がどんどん変化します。自分専用の道具に“カスタマイズ”していく喜びを感じられるでしょう。

使い込むほどに家庭の味を包蔵し、なじんだ油が唯一無二の味わいをつくり出す――。それが、鉄フライパンの“真価”なのです。

荒井氏セレクト 意匠のある、オススメ鉄フライパン

男性が持つべき、鉄フライパンを荒井氏がセレクト。それぞれの持ち味を解説します!

Profile

荒井 康成 YASUNARI ARAI
料理道具コンサルタント/Kitchenware Stylist

洋菓子店店長、和陶器店主を経て、フランス陶器エミール・アンリ社の日本法人設立に携わる。以後、日本初の「料理道具コンサルタント」として独立し、「料理通信」「ELLE gourmet」など、各食情報誌でのコラム執筆やスタイリング撮影、Panasonic「ふだんプレミアム」や魔法びんのパイオニア「サーモス」のInstagramディレクション、「キユーピーサラダクラブ」や「カルビーフルグラ」など食品会社の販促物スタイリング撮影、食の学校「レコール・バンタン」では講師として、多岐に渡り活動中。著書に「ずっと使いたい世界の料理道具」(産業編集センター刊行)。http://www.araitools.com