ここ数年「おうち時間」が増え、インテリアと時間を共有することが多くなった。狭くて、収納が少ない、床にできるだけものを置きたくない、そんな昨今の事情から期待が高まるのが、どんな部屋にでも必ずある「壁」。おしゃれな“見せる収納”アイテムを次々生み出している、富山県高岡市に工場を構える壁付けインテリアブランド『WALL MATES』にヒットアイテム開発の背景を聞いた。
「壁」をインテリアとして便利に使える、ヒットアイテムを次々にプロデュースしている「WALL MATES」。1968年に創業した株式会社ベルクが、インテリア商品の企画、販売をスタートしたのは1992年のこと。
「ベルクでは、石膏ボードの壁につけるフックを開発していたので、その線上で『もっと壁を上手に使えるアイテムをつくれるんじゃないか?』と思って始めたのが『WALL MATES』。『「いいね!!」をカタチに。』をキャッチフレーズに、お客さまに『いいね!』と言っていただけることを形にしていきたい、という思いで商品づくりをしてきました。『いいね!』は現代では頻繁に使われていますが、もしかしたら我々が先に使い始めたのかもしれないですね(笑)」(沢田信義さん)
壁に特化した商品を生み出せた背景には、“フック”の知識に長けていたのと、もうひとつある。
「創業時、今までと違う、軽くて薄くて強くて長持ちの“アルミフレーム”を日本で初めて開発したんです。当時はまだ戦後20年ちょっとで、住宅のサッシもアルミに変わり始めた頃。当社のアルミはレール形状の押し出し材なので、壁を便利に使うアイテムづくりにぴったりだったんです。
たまたまかもしれないですけど、『インテリアにもアルミを使う』という未来の日本を、いち早く予見していたのかもしれないですね。アルミをインテリアに使うというのは、当時かなり画期的だったと思いますし、アルミのノウハウを知っていたことは、商品づくりに有利だったと思います」(好多義朋さん)
時代がさらにコンパクトでシンプルなものが求めるようになったと同時に、度重なる震災も日本人のインテリアに対する条件も変えていった。
「アルミには、耐震性・耐久性に強い商品をつくれるという利点があって、多くのものを掛けたり飾ったりするような使い方も得意な素材。それまではインテリアには『名品を見せる』という目的があったかもしれませんが、今は『収納しながらちょっと飾れば生活が楽しくなる』という感覚なのではないでしょうか。暮らしを豊かにする文化をつくっていきたいですね」(本田裕紀代さん)
創業以来、蓄積してきた500件以上の知的財産を駆使した技術やデザインで、インテリアにもなる便利な商品を次々と生み出してきた「WALL MATES」。中でも、売れ筋は昔の日本家屋に欠かせない「長押(なげし)」を現代風にアレンジした「スリム長押」だ。
「もともと長押は柱を固定するための構造材でしたが、衣服などをかけるのにも使われてきました。これをスリムにできるのはまさにアルミのなせる技。『スリム長押』の上部に溝があるので、そこに本やCDなどを立てかけることもできます。置くだけで手軽に飾れるのが便利、とホームセンターに置かれ始めた頃から、かなりの反響があった商品ですね」(本田さん)
反響である“声”にはできる限り耳を傾け、商品に反映していく。この「スリム長押」も、「よりお客さんが使いやすい商品にしたい」というこだわりから、フックの取り付け機能など、4回モデルチェンジをした。
「お客様からの声から、『この部分の問い合わせは多いな』とか『ここはもっと使い勝手がよくなるな』など、どこをチェンジすべきかわかってくる。みなさんの声を何らかのタイミングで取り上げることが、改良につながっています」(沢田さん)
こんな画期的な商品を比較的安く提供できるのは、“D to C”(Direct to Consumer)を取っているから。
「マーケティング、企画、製造、在庫管理、販売、と『WALL MATES』では1から10まで自社でやっています。デザインも自社でやりますし、工場での対応を考えてくれるスタッフもいる。それぞれの分野の専門スタッフが責任をもってやっているので、お客様の要望には応えやすいのだと思います」(沢田さん)
「『暮らしを快適にしたい』という方々の声に、メーカーとして少しでもお手伝いできたらと思っています。これからも、お客さまの暮らしを想像し、より豊かにできるような商品ラインナップを充実させていきたいと思っています」(好多さん)
住宅の“壁”をもっとおしゃれで便利に
「WALL MATES」が予見する未来