GOODA
vol.22 INDEX

シンプル×素材感がキーワード
心地よい空気をまとう
軽やか春スタイル
春のあたたかな陽射しに似合うのはシンプルなデザインと着るだけでやわらかな雰囲気をまとえるエアリーで存在感のある素材。そんな自然体のリラックスムードで陽気な街へと繰り出そう。
Photos : SATOSHI OSAKI
Styling : DAISUKE KAWACHI
Hair&Make : TADAKAZU KOTAKI

ノーカラージャケット6万480円、パンツ2万9,160円/ともにETHOSENS(ETHOSENS of whitesauce TEL:03-6809-0470)、シャツ2万8,080円/スティーブン アラン(アダム エ ロペTEL:0120-298-133)

ニット3万240円/ffiXXed(DUNE TEL:03-5784-5840)、パンツ1万6,200円/アダム エ ロペ、スニーカー6万480円/ファイト(ともに、アダム エ ロペTEL:0120-298-133)

プルオーバーシャツ2万3,760円/URU(STUDIO FABWORK TEL:03-6438-9575)、パンツ2万520円/アダム エ ロペ(アダム エ ロペTEL:0120-298-133)、サンダル3万7,800円/BLACKBARRETT by NEIL BARRETT(PROJECT TEL:03-3409-3421)

ジャケット8万4,240円、パンツ4万9,680円/ともに、UMIT BENAN、シューズ2万8,080円/UNITED ARROWS(以上すべて、ユナイテッドアローズ 原宿本店 メンズ館TEL:03-3479-8180)、シャツ1万9,440円/URU(STUDIO FABWORK TEL:03-6438-9575)

お洒落な人を見つけたら
そっと後をつけて行くんです

 独特の世界観で、お笑い界に異彩を放つ又吉さん。実は芸人仲間の間では、個性的なファッションセンスを持つ男としても有名だ。目指すは“おじいちゃんみたいな格好”と豪語する、又吉さんのセンスはどのように培われたのだろう。
「中学生の頃に、バスケのジャージに足元はバッシュといったヒップホップ風ファッションが大流行したんです。友達はこぞってシカゴブルズのユニフォームを着ていました。でも、僕はこんな顔ですからね、どうしても似合わない。それに街中で競技用のバッシュを履くことに違和感もありました」
 そこで目をつけたのが、おじいちゃんだったという。
「柄シャツにループタイ。スラックスを穿いて、頭にはハンチング。そんなお洒落なおじいちゃんに憧れ、これなら自分でも似合うはずとマネるようになったんです。友達からは『ジジイやん』と冷やかされましたが、そっちのほうが自分らしいし、カッコイイと思えました。でも、どこで買えばいいのかわからない。そこでアメリカ村に行って、公園で道行く人を眺めるんです。センスの良い人が目の前を通ったら、そっと後をついて行く。そうやって、お店を覚えていきました」

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コート5万4,000円/ffiXXed、インナー1万8,360円/SOULLAND(ともに、DUNE TEL:03-5784-5840)、パンツ3万2,400円/URU(STUDIO FABWORK TEL:03-6438-9575)

2万円を握りしめて買い物に行った
中学生の頃を思い出して

 ファッションへの情熱は現在も衰えず、いまでも週に1度は古着屋に足を運ぶという。
「あまり見たことがない服を見つけたら、とりあえず買ってしまいますね。年代がよくわからない洋服や、30年代のシガージャケットとか、アクが強いものが好きなんですよ」
 又吉さん流のお洒落を楽しむコツを聞くと、こんな答えが返ってきた。
「最近は『ファッションにお金をかけない』という縛りと、『ちょっとアレンジする』という決まりを自分に課しています。2、3年前が人生で一番、洋服にお金を使っていた時期なのですが、高級なモノに手を出しはじめると、キリがない。上には上があるし、高いモノには良いモノも多いじゃないですか。だからついつい欲しくなる。でも、中学生のときに2万円を握りしめながら、限られた予算のなかで、全身を揃えていたときのほうが、ずっと楽しかった気がするんですよ」
 そんなファッションへの熱い想いが溢れ出し、あらぬ方向に考えが至ることもあるという。

「自意識について考え出すと、訳がわからなくなってくるんですよ。お洒落をしたいけど、そもそも“お洒落”とはなんや。ジーパンにTシャツといった格好は、男前にしか許されないし、『こんな自然体の俺ってどうですか?』って自意識過剰に主張している感じがして、恥ずかしい。それより自分の趣味に走っているほうが、まだ楽だけど、個性的ぶってると思われるのもイヤ。洋服なんてモノがあるから惑うんや。みんな制服を着れば、こんな悩みも生まれないのにって一晩中考える夜もあります」
 こうして気がつくと思考をめぐらせ、深みにハマっていく又吉さん。発表されたばかりの小説『火花』でも、又吉さんの独特の世界観を堪能できそうだ。

PROFILE
又吉 直樹(またよし なおき)
1980年6月2日生まれ。大阪府出身。2003年に綾部祐二とお笑いコンビ「ピース」を結成。キングオブコント2010では準優勝、同年のM-1グランプリでは4位に輝いた。読書家として知られ、とくに太宰治のファンを公言している。お笑いの活動に並行し、エッセーなどの執筆も続けていたが、『文學界』2015年2月号に寄稿した小説『火花』が大きな反響を呼んだ。急遽、単行本の発売が決定し、文藝春秋より現在発売中。

 主人公はお笑い芸人で「スパークス」という漫才コンビを組む徳永。徳永は、「あほんだら」の神谷という先輩芸人に熱海で電撃的に出会い、その笑いに対する「哲学」と人間性に深く共感し、日々行動を共にする。神谷との付き合いの中で、さまざまな魅力溢れる人間たちと出会う。徳永は芸人としてテレビでも売れ始めると、二人の間柄は微妙に変化していく……。
 笑いとは何か、人間とは何かという問いが、深い視線で、彫琢された文体で描き出されている。文学的蓄積豊かな又吉直樹は、初の純文学作品をストイックなタッチで感動的に仕上げた。