
『フープディドゥ』は、加藤冨士逸(ふじいつ)という一人の改革者から誕生したメンズの靴ブランドだ。「街にはイケてるオヤジが履く靴がない」と孤軍奮闘。1987年には「楽しくやろうぜ!お祭り騒ぎ!」の意味を持つ、「whoop’-de-doo’」という言葉を冠した会社を、東京における靴作りの聖地・浅草に設立した。
「コンセプトがないのがコンセプト」というアティテュードを貫いてきた冨士逸の遺伝子を受け継ぎ、ますます進化する『フープディドゥ』は、2027年に創業40周年を迎える。冨士逸の直弟子としてその薫陶を受け、現在はデザイナーとして全アイテムのディレクションをしている、長岡祐太朗さんに、会社の歴史と“いま”について話を聞いた。
1987年の会社設立直後から、革新的なデザインの靴を次々に発表し、メンズの靴業界に革新をもたらした『フープディドゥ』。いつ行っても新しいデザインが並ぶアパレルのように、“四季がある靴店”というのも、保守的な業界では非常に先鋭的な存在だった。しかし彼らの真価は奇抜さや目新しさなどではない。本当に履きやすく、クオリティの高い靴として評価されたことが、売れ行きに結びついてきたのだ。
「先代社長の冨士逸は、もともと靴屋の家系に生まれたということもあって若い頃から靴業界に身を置いていました。世界の一流の製品をバイイングして日本に紹介してきた実績もあるし、自分の発想したデザインを実現してくれる工場をイチから探して開拓し、仲間を増やしてきたという蓄積もある。だからこそ、工場や職人さんとのつながりも非常に強くて。破天荒に見える発想でも、実は深みがあってしっかりと筋が通っていたし、それをきちんと形にできる技量や人脈もあったんです」(長岡さん)
先代がたびたび口にしていた言葉が「やっぱぶっ壊してーよな」といった、いわばパンクでロックな気概は、今の会社にもしっかりと生きていると言う。
「長年培った工場や職人さんとのつながりや浅草という地の利も、なかなか他社に真似できるものではない。この会社だからこそできる“ものづくり”があると思いますし、亡くなる直前までデザインを手がけ、新しい発想をしていた先代の働き方を間近で見ることができたのは、自分にとって大きな財産になっています」
長岡さんは現在、9つある『フープディドゥ』の全ラインのデザインを担当。サンダルからスニーカー、ドレスシューズまで、毎シーズン30型以上を企画し、工場やメーカーとタッグを組んで、商品化していく。お客さんは長年ファンでいてくれる人が多いという。
「インパクトのある靴づくりや、独特のワクワク感を魅力に感じてくださる方が多いようです。また、サイズ感や足入れの良さ、履きやすさの面でも高く評価してくださる方が本当に多いですね。実際に靴の悩みを抱えていた方から、『履いてみたら他と全然違った』『最初から足に合った』という喜びの声をいただくこともあります。
欧米の靴はどうしても骨格やくるぶしの高さなどの想定が全く違うので、靴擦れが起きやすいし、足の収まりが悪いことも多々ある。また、S・M・Lといった大まかなサイズ展開の靴を履いて歩くことで、足を傷める人もいます。けれども私たちは、日本人の足の形に合う木型や数値の蓄積がありますし、ハーフサイズ刻みで緻密にものをつくる、ということをやってきています。そういった、うちにとってはごく当たり前のことが、ブランドの特長になってきているのかもしれませんね」
「創業者の冨士逸は、“コンセプトがないのがコンセプト”だと、よく口にしていましたが、私の場合は、“こだわりがないのがこだわり”と言えるかもしれません。それはものづくりにこだわりがない、という意味ではなくて。デザインだけにこだわってしまったり、クリエイションに固執してしまうことで、ものづくりがおろそかになるのは違うのではないか、という意味です。靴を作ってお客様に届け、満足していただくためには、我々の会社と各メーカーや工場などとのつながりが必要。自分の役割は突き詰めるとその架け橋になることなのかな、と考えています」
木型のカーブひとつ、かかとのシェイプひとつ取っても、足入れが変わってきてしまうのが靴作りの世界だ。
「もちろん、全ての方の足に必ず合うという靴はないですし、デザインとの両立となるとますます難しい。けれどもおしゃれさと機能性、どちらが欠けても面白くないし、洗練されすぎても面白くないと僕は思うんです。『フープディドゥ』らしさ、ブランドらしさとは何かを出していくために、常にお客様の意見を取り入れつつ、突き詰めていきたいなと思っています」
Uモカ カジュアル スリッポン
かかとに芯材を入れず、柔らかく仕上げた一足。しなやかな牛革をアッパーに使い、ソールも革底+半貼りラバーの仕様。バブーシュのようにかかとを踏めるくらい柔らかな足当たりも好評で、リピーターも多い不動の人気モデルだ。カジュアルなシーンはもちろん、仕事で愛用する人も多く、カラーバリエーションも豊富に揃う。
栃木レザー ストレートチップ
栃木県で製造されている植物タンニンなめしの革を使用した、ロングセラーの日本製ビジネスシューズ。手間ひまかけてなめされた極上の革は、履き込むほどに風合いやしなやかさが増し、足に馴染みながら美しい経年変化を楽しめる。『フープディドゥ』ならではの、染革職人との共同開発によるレザーの色出しもポイントだ。
シープレザースニーカー
軽量で柔らかなシープレザー(羊革)のアッパーが魅力のスニーカー。細身でスタイリッシュな木型と、すっきりしたモールドのソールを組み合わせることで、スニーカーでありながらカジュアルになりすぎず、ドレッシーな印象に。牛革でかかとのラインを効かせたデザインも人気だ。