2006年に夫婦ふたりでスタート、看板・サインの設計・製作・施工を手がける企業として、15年で大きく成長した株式会社高昇。もともとECで取り扱っていたアクリルパーテーション事業を、2020年春、緊急拡大。現在、国内最大級のパーテーション製造業者となった高昇の代表取締役・岡本美咲氏にその信念を聞いた。
「まさに“戦争状態”でした(笑)」と、昨年の今頃の社内の状況を語る、株式会社高昇・代表取締役の岡本美咲さん。2006年に夫とふたりでデザイン会社としてスタートし、顧客から「看板も作れないか?」という相談を受けたことから、看板・サインのデザインに乗り出した。現在では、開発・設計・製造・検品・販売・配送の一貫業務を5つの事業拠点で展開し、200人の従業員を雇用する企業に発展した。
その高昇が2020年夏、“戦争状態”だったのは、飛沫感染防止パーテーションや消毒ディスペンサーの製造を本格的にスタートさせたから。
「もともとコロナ禍以前から、アクリルパーテーションは販売していたんです。コロナ前までは、飲食店の相席対策のためなどに購入される方がメインでした。それが4月頃からにECサイトで急激に売れ始めた。そこで、この事業を拡大すべき、という判断をしたんです」(岡本さん)
岡本夫妻は飛沫防止製品の需要増加と、コロナ禍の継続を予測し、素早い展開を試みた。
「4月の時点でまず、日本で購入できるアクリル板をすべて仕入れたのですが、それでも全く足りなかった。当時中国の状況はさらにひどかったので、韓国・台湾に仕入れ先を探し、仕入れられるアクリル板は全て購入したんです。
アクリル板を加工する機械はすでに自社工場に持っていたので、それで工場をフル稼働していたのですが、24時間機械をまわして、慣れない梱包作業に追われ、もう限界で(笑)。1枚ずつカットしていたら全然間に合わないので、アクリル板を1回に10枚単位でカットできる機械を投入し、9月から原木工場を新設しました。それでやっと落ち着き始めましたね」(岡本さん)
“パーテーション戦争”がひと段落ついた頃、ウイルス除去機能がある空気清浄機や、AI顔認識の検温機、消毒ディスペンサーの開発・製造も本格化。こちらについては、高昇ではそれまで取り扱っていなかった商品だ。
「例えばAI顔認識の検温機は、当時市場価格が30万円以上で単価が高かった。高昇では、“誰でも買える値段”に設定することを目標にしました。安くてもたくさん売れれば利益が出る、という考えでやっています。2021年は昨年よりも製作コストが上がっていますが、売り上げもそこまで下がってはいないので、まずまずと考えています。市場占有率のキープをいつも念頭に置いています」(岡本さん)
消毒ディスペンサーの開発にあたっては、看板・サインの企業ならではの利点もあった。
「最初に手がけたのはアルコールスプレーだけ。ではスタンドはどうするか? となったとき、看板やサインの廃材を使ってみよう、ということになって。AIのサーモカメラを入れて組み立てるまでを自社でやってみることにしたんです」(岡本さん)
現在もアクリルパーテーションの本格的製造・販売のきっかけとなったECサイトを、販売体制の中心に据えて増強を図っている。総ユーザー数は16万人超。運営を通じて市場ニーズを敏感に吸収し、開発製作にスピーディに生かしている。今後、高昇はどう展開していくのか。
「今後は何をやっていけばいいか、常に考えています。季節の商品は定期的にやっていきたいので、今は扇風機・ファンの販売を展開中。高昇はビジネスの動きを敏感に捉えつつ、即行動に移すことをモットーにしています。右も左もわからないところから始めた事業ですが、今もまだまだ勉強中。これからもずっと勉強だと思っています」(岡本さん)