有名ブランド腕時計の正規品を取り扱う通販サイト「時計館」。その実店舗となるのが、栃木県宇都宮市で創業100年以上の歴史を誇っている老舗時計店「株式会社タケカワ」だ。スタッフの幅広い知識、確かな技術など、実店舗の実力が通販サイト「時計館」の信頼を支え、一方で、「時計館」が実店舗を活性化させているという。その相乗効果を生み出す源泉となっている老舗ショップの挑戦に迫る。
横浜に生まれ、東京の時計店に奉公に行って修行を積んだ竹川美夫氏が、妻の実家である栃木県・宇都宮市に移り住んで創業したのが1915年。現在、栃木県・宇都宮市内に6店舗を展開する、株式会社タケカワは100年以上の歴史を持つ時計店だ。二代目を務めるのは、美夫氏の息子である竹川恵士氏。92歳になった今でも、毎日すべての店舗の売り場に立っているという。メーカーや輸入先との交渉などは、現在・専務取締役である、恵士氏の息子・竹川哲夫氏が担っている。
宇都宮市の中心に位置する、アーケード型商店街「オリオン通り」。その一角に、本店、G-TIME店、ウォッチメゾン店、ブライトリング店、ブリリアント店の5つの店舗が隣接、さらに目の前の東武宇都宮百貨店内に東武店がある。
「店舗を分けているのは、各時計ブランドの世界観をより表現しやすくするためなんです」と専務の竹川哲夫氏は言う。ラグジュアリー系が並ぶ本店・ウォッチメゾン店・ブライトリング店、またG-SHOCKなどのストリートカジュアル系が並ぶG-TIME店など、各腕時計のブランドが持つカラーによって、店舗が分けられている。
今のようにメーカーが量産できなかった時代、腕時計は「壊れたら直す」のが基本。そのため採用する社員は、修理技術を習得したベテランのみだった。時代は変わり、2000年代に入ってストリートカジュアルのような商品を取り扱うためには、若い感性が大事だと感じた専務の竹川哲夫氏は、腕時計が好きな若手の採用にも積極的だ。
現在、社内のスタッフ23名中、7名が国家技能検定、時計修理、職業訓練指導員資格などのライセンス取得者が在籍。若手社員に取得希望者がいればサポートし、メーカーから工場見学の誘いがあれば、若手の希望者から優先的に参加させている。「ゆっくり成長していって欲しい」それが、竹川哲夫専務の願いだ。
祖父が創業し、父が大きくした時計店「タケカワ」。続く竹川哲夫専務が自らの功績として自負すること、それが2005年頃から楽天市場内で開始した、タケカワの通販サイト「時計館」だ。開始当時から社長も積極的に応援。優秀な若手スタッフのサポートも得て、順調に功績を伸ばしている。
店員の顔が見えない通販サイトで、高級腕時計を購入する。お客様が不安なくそれができるのは、時計館が実際に時計を取り扱う実店舗であり、かつ100年以上続く老舗店だから。その安心感は、絶大で「WEB上だけでなくリアルでも腕時計を販売している通販サイト、ということはお客さんに安心してもらえる大きな材料です」と時計館を担当する小林さんは言う。
時計館のサイトで購入する人のほとんどは、店頭で実物を確認してから。その逆もしかりで、タケカワに訪れるお客さんは、インターネットなどで特徴や情報を調べてから来店するという。実店舗と通販サイト、その相乗効果を感じている。
お客さんが安心感を持つもうひとつの理由として、タケカワがアフターサービスに力を入れていることもある。タケカワで購入した商品はもちろん、他店で購入した持ち込み品でも修理を受けつけている。
通販サイト・時計館でも購入した商品に対する電話やメールの問い合わせには、きっちり対応することを心がけている。また時計館で購入してもらった商品には、メーカーの取り扱い説明書以外にも、「やってはいけないこと」をわかりやすく箇条書きにまとめた、社員手作りの「取り扱い注意書」を同封している。
スマホの普及などによって、若者の腕時計離れがささやかれている現在、一方ではその魅了されている若者も確実にいる。今後、腕時計は「機能が重視される道具としての役割を卒業して、より趣味性が重視されるもの」になっていくだろうと、竹川専務は言う。
時を計るものがなかったら、自分の人生も計れないし構築もできない。人生の中で時間の観念を持って、時間を有効に使っていく人が増える未来へ……、その材料のひとつが腕時計であってほしい。その思いで、株式会社タケカワは歴史を刻み続ける。