匠のモノ語り
やきそば王国

地元で愛される味を美味しさそのまま全国の食卓へ

Text:HIROMI YAMANISHI(HISTOREAL)Photo:YUSUKE SERIZAWA 2020.8.20
やきそば王国の冷凍富士宮焼きそば

昭和57年創業の昭和ミート株式会社が、その数年後生産を開始した冷凍調理麺。その昭和ミートが、「B1グランプリ」で盛り上がりを見せた「富士宮やきそば」の冷凍麺販売をメインにしたECサイト「やきそば王国」を2019年10月にスタート。現在のところ売り上げは絶好調。そこには、地元を愛する、真面目な生産者の熱い思いがあった。

やきそば王国

冷凍調理焼きそばが広まったのは、「B1グランプリ」

昭和56年、精肉会社としてスタートした、昭和ミート株式会社。現在昭和ミートが本社を構える、静岡県焼津市のこの場所で、当時やきそば工場をやっていた会社を買い取ったのが、冷凍麺製造を始めたきっかけだ。当時はまだ冷凍麺は家庭には広まっておらず、大手企業や学校給食から受注されたものを製造していた。

「家庭用の冷凍麺を多く製造し始めたのは、ここ15年くらいのこと。ちょうど『B1グランプリ』が盛り上がりを見せ始めた時期ですね」と、取締役の水谷賢司さん。そのB級グルメの祭典「B1グランプリ」で有名になったのが、同じ静岡県の富士宮市。もともと全国的に見ても、やきそばの消費量が多かった市だ。

昭和ミート株式会社取締役の水谷賢司さん
昭和ミート株式会社の前社長の誘いで、2年前に入社。取締役に就任した水谷賢司さん。出勤したら、1日1食の「やきそば」は欠かさない。

2000年に町おこしのために立ちあがった「富士宮やきそば学会」が、豚の背脂からラードをしぼった肉カスとキャベツ、コシのある太麺をウスターソースで味付けし、最後にイワシの削り粉をふりかけた「富士宮やきそば」をアピール。2006年に開催された、「B1グランプリ」の第1回、第2回では優勝を果たし、全国へと広がった。

「昭和ミートでは、もともと蒸した麺を肉と野菜と炒めてソースで味をつけ、そのまま冷凍した、冷凍調理焼きそばをつくっていました。B1グランプリでの優勝をきっかけに、『冷凍富士宮やきそばをつくらないか』という話をいただき、つくることになったんです」

麺のもちもち感とつくり立ての味が再現される理由は、“急速冷凍”。昭和ミート株式会社では、マイナス40℃の専用の冷凍庫を使用している。

「できたての味を凍らせた状態で、冷凍庫で1年保存できます。つくり方はレンジで3分半あたためるだけ。裏技としては、レンジで温めた麺をさらにフライパンで軽く炒めること。本格的な富士宮やきそばが味わえますよ」

温めるだけで本格的な富士宮やきそばが味わえる
3分半温めるだけで、できたての本格的な味を再現

SNSで反響が高かったメニューを商品化

社名に「ミート」がついているものの、冷凍調理やきそばを中心に製造している昭和ミート株式会社。
「みなさんからよく『なぜ肉屋さんがやきそばをつくっているの?』といったご質問をいただくので、ならば、“やきそば”という名前を入れよう、ということで立ちあげたのが、ECサイト『やきそば王国』なんです」
外出自粛の傾向が続く中、「やきそば王国」の受注は、増え続けているそう。中でも、一番の売れ筋商品は、牛丼チェーン「吉野家」とコラボレーションした「吉野家×富士宮やきそば『牛肉やきそば』セット」だ。

吉野家とコラボした牛肉やきそば

「昨年、お祭りで1日限りのメニューとしてつくったのですが、SNSを中心に、すごい反響だったらしいんです。それで、うちに『冷凍調理麺として販売できないか?』というお話をいただきました」

しかし、牛丼といえば相性がいいのは「ご飯」。「最初は小麦でできた麺とは、うまく味がかみあわなかった。弊社で20年味付けを管理している、開発担当が富士宮やきそば学会さんの厳しいジャッジのもと試作を繰り返して、ようやくできあがった味がこれなんです」

現在、非常食としてのレトルト麺の製造、海外への進出なども視野に入れていると、水谷さん。「外出自粛になって、自宅で食べられる冷凍調理麺の売り上げが好調なのはありがたいのですが、やはり早く県外に外出ができるようになって、富士宮やきそばを食べに来ていただきたいですね。今は、この商品を食べて、旅行気分を味わってもらえたら、と思っています」

Three Focus Storys

  • 大反響の吉野家コラボがいつでも食べられる

    吉野家×富士宮やきそば「牛肉やきそば」

    2019年、富士宮市内の複合型店舗「お宮横丁」の15周年記念感謝祭で提供された「吉野家×富士宮やきそば『牛肉やきそば』。「富士宮やきそば」の肉が、「吉野家」の牛丼の牛肉になった、どっしりした個性豊かな味わいで、当日の出店は大反響。イベント終了後もSNSを中心に多くの反響を呼んだことから、簡単調理でいつでも楽しめる冷凍食品として販売することになった。「吉野家」のECサイトでも購入可能。

  • 材料は国産、味付けはオリジナル

    安心安全な国産の材料を使用

    同じ焼津にあるソース専門店で、昭和ミートの富士宮やきそば専用のソースを受注、イワシ粉は焼津の専門業者から直接購入。キャベツと肉は国産を中心に、味が良く安全なものを選んでいる。本社の従業員は50人ほど。
    ここでは、「富士宮やきそば」のほか、「横手やきそば」「横浜ナポリタン」「たこやき」など、1日5トン、約5万食の冷凍調理麺がつくられている。

  • パッケージから充填まで社内で

    焼きそば王国焼津の本社工場

    麺をつくって、蒸して、味付けし、できあがった調理麺は、スタッフの手作業で、ひとつひとつ肉や野菜のバランス、形の悪い麺を排除しながら1食分に分けられる。そこから急速冷凍、パッケージに詰めるまでの全てをこの焼津の本社工場で行われている。商品のパッケージも、本社勤務の女性スタッフによりデザインされている。