創業118年の老舗米穀店「株式会社神明」のグループ会社「株式会社神明きっちん」が着目した、新鮮な玄米1kgから、約0.6gしか取れない貴重な圧搾米油。約2年の開発期間を経て、その米油、米ぬかを商品化。その後、2018年、その希少性をそのまま名前に込めたショップ「0.6ライスブランオイル」を東京・青山にオープン。そのものづくりには、「日本の伝統文化・米の魅力を余すところなく伝えていきたい」という想いがあった。
新鮮な玄米1kgから、約0.6gしか取れないという圧搾米油。この貴重な圧搾米油の開発から、ショップの立ち上げ、商品やメニューの開発までを担当する、大塚瑛理香さん。「近年、糖質オフダイエットなどが広まり、米の消費量が減っています。一方では玄米や雑穀米などの健康米の消費量は増えている。“どうしたら、お米をもっと食べてもらえるか?”そう考えたときに、着目したのが捨てている玄米の米ぬかだったんです」
まずは、その米ぬかから取れる、米油に注目。薬剤を使った抽出方法がほとんどである中、「神明きっちん」では、機械の圧力だけでぬかを絞って油を出すことができないか、と考えるようになる。
「米ぬかは、時間が経つにつれて劣化が激しくなるという問題があります。そのため、精米直後の新鮮な米ぬかをすぐに圧搾するシステムが必要。やるのであれば、体にいい方法を突き詰めたいとの思いから、圧搾機械の製造を協力会社に依頼するところから始めました」
貴重な米油を取ったあと、カスとなって残った米ぬか。そこにも10%ほどの、油が残っていることがわかった。「薬剤を使った一般的な抽出方法では、油分は全く残っていない状態になります。『神明きっちん』の圧搾方法である『ナチュラルプレス製法』では、油分が残っているため米由来の美容成分を米ぬかに残すことができるんです」
米油にはコレステロールや中性脂肪を低下させると言われる「トコトリエノール(スーパービタミンE)」、美容効果が期待できる「γ-オリザノール」などが、米ぬかには、ビタミン・ミネラル、食物繊維やタンパク質などが多く含まれる。どちらも普段不足しがちな栄養を一度にチャージすることができるスーパーフードだ。
「米ぬかの栄養価をそのまま日常に取り入れられないか」、その思いからプロテインや青汁を参考に、粉末商品としての開発に成功。飲み物に溶かしたり、料理に混ぜ込んだりして使える「飲める米糠」は、ショップ「0.6ライスブランオイル」ではもちろん、ECサイトでも購入できる。
「ストレスと腸内環境は深くつながっていて、免疫物質の7割は腸でつくられると言われています。米ぬかの30%は食物繊維で、またオリゴ糖も豊富。これらは腸内フローラ(腸内に生息している、腸内細菌)のエサになるので、腸の動きを活発にしてくれることが期待できます。ストレスを感じている世代の方々に飲んでいただければ、血糖値などの数値も目に見えて変わってきますし、男性でも肌の弾力が変わってくると思いますよ。もっともっと手軽に食べていただくために、溶けやすさの改善、味の改善なども進めていきたいですね」
大塚さんがもうひとつ、力を入れているのが、美容アイテムの開発・販売だ。
「米油をできる限り配合した、ビタミン豊富なフェイスケア、ボディケアアイテムも数多く開発しています。防腐剤も一切使っていませんので、“食べられる化粧品”として、体に安全なものになっています」
「0.6ライスブランオイル」では、ウィルス感染対策をしっかり取って、現在営業している。店内では、ベーグルサンドやサラダ、スムージー、米ぬかバーなどのビーガン仕様のメニューが食べられる。メニューは随時開発中だ。
「米油や米ぬかを使った商品を開発することで、間接的ではありますが、お米の消費量を上げたいという思いがあります。日本の伝統的な文化であるお米の可能性を、これからもどんどん追求していきたいと思っています」
健康と美をつくる
「米油」「米ぬか」が広げる
“米”の可能性